セッション情報 ワークショップ9

炎症性腸疾患の内科的治療戦略と外科との接点

タイトル W9-11:

抗TNF-α抗体製剤が著効するクローン病患者の特徴

演者 石田 哲也(大分赤十字病院消化器内科)
共同演者 永松 秀康(大分赤十字病院消化器内科), 上尾 哲也(大分赤十字病院消化器内科)
抄録 目的:抗TNF-α抗体製剤の登場によりクローン病治療は大きく様変わりし,その登場以前に比して患者のQOLは大幅に向上したがクローン病の長期予後,自然史を変えるためには,抗TNF-α抗体製剤の薬効を最高に引き出すことが必要である.そこで当科において抗TNF-α抗体製剤投与を投与したクローン病患者のうち経過良好症例の条件を検討したので報告する.方法:対象は2002年より2012年6月まで当科で抗TNF-α抗体製剤を導入したクローン病患者である.今回の解析は遡及的な解析で,抗TNF-α抗体製剤として仕様経験が長期であるインフリキシマブ(IFX)を用いた.画像診断で縦走潰瘍以上の粘膜病変を有し,ステロイドやTPNを必要とする病勢の患者をIFX導入の適応とし,3回(0,2,6週)投与後,以後基本的には8週毎に維持投与した.IFX導入後一度もクローン病による入院,手術がなく,効果減弱がなく,免疫調節剤,白血球除去療法,成分栄養などの追加治療がなく8週投与を維持している症例を経過良好群(ND群,67例)とした.それ以外の病状悪化,再燃などにより使いの加療を必要とした群を経過不良群(D群,45例)とした.これら両群について種々の項目を比較検討した.結果:IFX導入までの罹病期間(月)(ND:D,8:60),腸管手術歴あり(%)(21:45),狭窄あり(%)(6:30),粘膜治癒(%)(84:26)で両群間に有意差があった.性別,病型,外瘻の有無などに差はなかった.またIFX導入後の追加治療(免疫調節剤,成分栄養)はその後の経過に影響を与えなかった.結語:当科での解析では罹病期間が短くて手術歴がなく,狭窄などの腸管合併症がない症例は抗TNF-α抗体製剤が著効する.この結果より罹病期間が短くて腸管変形を生ずる前に抗TNF-α抗体製剤を投与開始し,粘膜治癒まで改善させることがクローン病患者の長期予後,自然史を改善することに寄与するのでないかと推察された.
索引用語