セッション情報 ワークショップ9

炎症性腸疾患の内科的治療戦略と外科との接点

タイトル W9-12:

クローン病患者における生物学的製剤の初回および再手術率に及ぼす影響

演者 沼田 政嗣(鹿児島大学消化器内科)
共同演者 藤田 浩(鹿児島大学消化器内科), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器内科)
抄録 【背景】2002年にクローン病に対して生物学的製剤が導入され,内科治療が困難であった症例に対しても高い治療効果が得られるようになったが,生物学的製剤導入がクローン病に対する外科治療を減少させたか否かは明らかでない.今回我々は長期観察可能であったクローン病患者において,初回及び再手術の実施率に及ぼす生物学的製剤導入の影響を検討した.【対象と方法】1980年1月から2007年12月までに当科及び関連病院でクローン病と診断された166名(男性106名,女性60名)を対象として下記を検討した.(1)患者背景,(2)治療法,生物学的製剤の(3)5年累積初回手術率,(4)5年累積再手術率に及ぼす影響.【結果】(1)発症年齢(平均±SD)23.2±8.5歳,罹病期間(平均±SD)11.6±6.0年,病型(%)は小腸型30.6,大腸型11.3,小腸大腸型58.1であった.(2)栄養療法は64%に導入,5-ASA製剤83.9%,免疫抑制剤40.3%に投与されていた.生物学的製剤は59例(35.5%)に導入され,2002年以降の症例で69.4%と高率であった.初回及び再手術施行例は113例(68.1%),49例(43.4%)で発症から初回手術までの期間(平均±SD)は7.5±6.2年であった.(3)2002年以降に診断され,生物学的製剤が導入された症例は24例(14.5%)で5年累積手術率は22.7%であった.一方,生物学的製剤未導入で5年以上観察された症例から患者背景をマッチングさせた症例の5年累積手術率は29.7%であり,有意差はみられなかった.(4)生物学的製剤投与例における5年累積再手術率は18%で,患者背景をマッチングさせた生物学的製剤未導入例の5年累積再手術率58.8%に比して有意に低下していた(p=0.03).【結語】生物学的製剤は,既存治療に対する治療抵抗例に早期に導入されており,再手術率を減少させていることが明らかになった.生物学的製剤はその高い治療効果から早期導入によって長期にわたってQOLの改善が得られることが示唆された.
索引用語