セッション情報 ワークショップ9

炎症性腸疾患の内科的治療戦略と外科との接点

タイトル W9-13:

Infiximab投与は初回手術までの期間を延長し腸管の短縮を軽減する

演者 藤谷 幹浩(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学)
共同演者 坂谷 慧(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学), 高後 裕(旭川医科大学消化器血液腫瘍制御内科学)
抄録 【目的】生物学的製剤はクローン病の寛解導入や維持に有用であることが証明されている.しかし,発症早期からの投与を検証した報告はほとんど無く,その有効性は不明である.本研究では,Infiximab投与が初回手術までの期間の延長や腸管長の短縮予防に有用であるか否かについて明らかにする.【方法】当科で診療したクローン病104例の診療録をもとに,累積手術率および術中の小腸長を調べ,患者背景や治療との関連性について遡及的に検討した.本検討では腸管切除術,狭窄形成術,人工肛門増設術のみを手術とした.薬物治療については初回の手術前に行われたものを対象とし,Infiximabについては3回以上,ステロイド治療については30mg以上,免疫調節薬については1か月間以上投与した例をそれぞれの薬物投与群とした.【成績】全104例の50%非手術期間は107か月であった.比例ハザードモデルによる多変量解析の結果,累積非手術率を向上させる因子はInfiximab投与ありと大腸炎型であった.腸管長が計測された30例では,発症からの期間が長くなるにつれて腸管が短縮し(y=-0.5635x+364.36),腸管長が200cm以下,100cm以下になるまでの期間は,発症からそれぞれ292か月,469か月であった.一方,Infiximab投与群では,腸管長が200cm以下,100cm以下になるまでの期間は,それぞれ466か月,684か月であり(y=-0.4570x+412.72),Infiximab非投与群の200か月,329か月に比べ,それぞれ22年間,30年間延長していた.ステロイド投与群でも同様に腸管の短縮が軽減されており(y=-0.3330x+362.59),腸管長が200cm以下,100cm以下になるまでの期間が,非投与群に比べそれぞれ約23年間,29年間延長していた.【結論】発症早期からのInfiximab投与は初回手術までの期間を有意に延長した.また,手術に至ったとしても腸管短縮が軽減されており,短腸症候群の発症を予防する効果が期待された.以上から,Infiximabの早期投与はCDの自然史を改善する可能性を持つ有用な治療法と考えられる.
索引用語