セッション情報 ワークショップ9

炎症性腸疾患の内科的治療戦略と外科との接点

タイトル W9-15:

抗TNFα抗体製剤使用クローン病症例の手術適応

演者 小金井 一隆(横浜市立市民病院外科)
共同演者 辰巳 健志(横浜市立市民病院外科), 杉田 昭(横浜市立市民病院外科)
抄録 クローン病(以下,CD)で抗TNFα抗体製剤治療薬使用中に手術を要する症例の手術適応を検討した.【対象】CD手術例中術前に抗TNFα抗体製剤を3回以上使用した98例(男66例,女32例)で,CD発症時年齢平均23歳,手術時平均35歳であった.【方法】抗TNFα抗体製剤の適応となった病態と手術時の病態を検討した.【結果】抗TNFα抗体製剤の適応となった病態は,のべ症例数で,活動性病変44例,狭窄19例,内瘻14例,腸管皮膚瘻12例,肛門病変12例,術後再発予防7例であった.本剤治療中に新たな病変が56%(括弧内症例数:55)に出現し,のべ病変数で狭窄44,膿瘍11,内瘻11,痔瘻2,直腸瘻5,外瘻4,痔瘻1,直腸癌1であった.手術に至った主な病態は,狭窄が48%(47),内瘻,外瘻が32%(31),膿瘍が11%(11),出血などコントロールできない活動性病変が2%(2),直腸癌が1%(1)であった.抗TNFα抗体製剤を使用した主な病態別に,活動性病変のみで狭窄,瘻孔のないA群(39),狭窄のみで内外瘻のないB群(18),内瘻あるいは外瘻を合併したC群(27),肛門部病変のみのD群(7),再発予防のE群(7)で手術適応を比較すると,狭窄はそれぞれ,72%,67%,22%,57%,43%,瘻孔あるいは膿瘍は23%,28%,82%,43%,43%であった.A,B群は狭窄で手術になる率が高く,C群は内瘻外瘻あるいは膿瘍で手術になる率が高かった.術中,主病変に正常腸管や他臓器が巻き込まれていた頻度はA群28%,B群33%,C群67%,D群43%,E群29%とC群で高かった.内瘻合併例と外瘻合併例で,手術時の瘻孔閉鎖率は0%と17%であった.【結語】クローン病抗TNFα抗体製剤治療例では,活動性病変や狭窄の治療例では狭窄のため,内瘻外瘻合併例では内瘻外瘻や膿瘍のため手術が行われていた.後者では病変部に正常腸管が巻き込まれる例が多かった.本剤使用時は画像検査などで病変自体を観察して治療効果を判定し,線維性狭窄や改善のない瘻孔性病変に手術を考慮すべきである.
索引用語