セッション情報 |
ワークショップ9
炎症性腸疾患の内科的治療戦略と外科との接点
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タイトル |
W9-16:抗TNF-α抗体製剤登場によるクローン病初回手術率の変化
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演者 |
山下 真幸(札幌厚生病院IBDセンター) |
共同演者 |
田中 浩紀(札幌厚生病院IBDセンター), 本谷 聡(札幌厚生病院IBDセンター) |
抄録 |
【目的】クローン病(CD)は,診断から10年でおよそ50%の患者が初回手術を経験するとされてきたが,抗TNF-α抗体製剤登場後の手術率が検討された報告は少なく,infliximab(IFX)/adalimumab(ADA)がCDの自然史改善に寄与したか否かは明らかにされていない.今回我々は,抗TNF-α抗体製剤承認の前後10年間に診断されたCDを対象に,IFX/ADAがCD初回手術に及ぼした影響を検討した.【方法】2010年から2012年の間に当院を受診したCDのうち,1991年以降に診断され,検討可能であった368例(男性248例・女性120例,平均発症年齢23.5歳,小腸型109例・小腸大腸型198例・大腸型61例,IFX 198例/ADA 36例)を対象とした.1991年から2001年の間に診断された148例をA群,2002年から2012年の間に診断された220例をB群とし,両群におけるCD診断から初回手術までの累積手術率をKaplan-Meier法により検討した.さらに,累積手術率に影響する患者背景および両群の手術症例における手術理由を単変量解析により検討した.【結果】診断から初回手術までの累積手術率は,A群:1年14%,5年26%,10年45%,B群:1年8%,5年17%,10年29%であり,B群において有意に良好な成績であった(P=0.010).患者背景では,B群におけるIFX/ADA使用例数のみがA群と比較して有意に多かった(P<0.001).手術症例における手術理由では,内瘻に対する手術がB群よりもA群において有意に多く施行されていた(P=0.030).【結論】抗TNF-α抗体製剤が承認された2002年以降の10年間に診断されたCDにおいて,それ以前の10年間に診断されたCDよりも診断から初回手術までの累積手術率の改善が認められた.これらの群間に差を認めた背景因子はIFX/ADAのみであり,IFX/ADAはCDの内瘻に対する手術を減少させることで,CDの自然史改善に寄与する可能性が示唆された.一方,本検討における観察期間は十分でなく,さらなる大規模なコホート研究により詳細が明らかにされる必要がある. |
索引用語 |
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