抄録 |
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の病因・病態生理は,ゲノム,脳腸ペプチド,消化管運動,内臓知覚過敏,消化管免疫,腸内細菌,脳機能画像,心理社会的因子について,マルチモーダルに解明されて来ている.それに即応して,従来の高分子重合体,消化管運動調節薬,乳酸菌製剤,下剤,抗コリン薬,抗不安薬を超える薬物療法の開発が国際的に進んでいる.非吸収性抗菌薬,便秘型IBSに対するchloride channel-2賦活薬,guanylate cyclase C賦活薬,chenodeoxycholate,5-hydroxytryptamine(5-HT)4受容体刺激薬,下痢型IBSに対する5-HT3受容体拮抗薬,κ-opioid受容体刺激薬などをその嚆矢とする.選択的セロトニン再取り込み阻害薬,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬,ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬,心理療法の一部のエビデンスも集積しつつある.消化器病学会のガイドラインが検討されている情勢の中,IBSの治療効果の判定に関する知見も含め,意欲的な多数の演題の発表を期待する. |