セッション情報 ワークショップ10

過敏性腸症候群に対する新規治療法

タイトル W10-4:

機能性消化管疾患モデルにおけるIL-17の関与と大建中湯の有効性の検討

演者 秋穂 裕唯(九州大学大学院病態制御内科/北九州市立医療センター消化器内科)
共同演者 伊原 栄吉(九州大学大学院病態制御内科/北九州市立医療センター消化器内科), 中村 和彦(九州大学大学院病態制御内科/北九州市立医療センター消化器内科)
抄録 【目的】過敏性腸症候群(IBS)の発症には消化管の炎症による腸管免疫系の異常が関与し,low grade inflammationという疾患概念が確立されつつある.今回我々は抗CD3抗体投与後腸炎におけるTh17サイトカインの関与と大建中湯の有効性を検討した.
【方法】急性腸炎はBALB/cマウスに抗CD3抗体(12.5μg)を腹腔内投与することにより作製し,胃腸管輸送能をGeometric centerによって評価した.サイトカインの発現はreal time RT-PCRおよびマルチプレックスアレイによって検討した.大建中湯は抗CD3抗体投与後より,2700mg/kg(マルトースを含む)を1日1回連日経口投与した.
【結果】抗CD3抗体投与により絨毛の萎縮・陰窩の増生・アポトーシス・軽度の炎症細胞浸潤を特徴とする一過性の腸炎を認めたが,投与後7日目には組織学的な炎症は消失.抗CD3抗体投与によりGeometric centerでは急性期において輸送能の顕著な低下,炎症終息期において輸送能の亢進を認めた.抗CD3抗体投与により蛋白レベルでは急性期にIL-1β,TNFα,IL-6,IL-17の発現亢進を認め,IL-17は炎症終息期まで発現を認めた.IL-17-/-マウスでは急性期において輸送能の顕著な低下を認めたが,炎症終息期において輸送能の亢進を認めなかった.逆にIL-17の腹腔内投与(10μg/mouse/day,3日間)は輸送能の亢進をもたらした(5日目).大建中湯投与は,炎症による組織障害は抑制しなかったが,炎症時の細胞浸潤,小腸組織のIL-17産生誘導,炎症終息期における輸送能の亢進を有意に抑制した.
【結論】本モデルにおける炎症終息後の腸管運動過亢進には,IL-17が関与している可能性が考えられた.大建中湯の投与は本モデルにおける腸管運動能異常に有効である可能性が示唆された.
索引用語