セッション情報 ワークショップ10

過敏性腸症候群に対する新規治療法

タイトル W10-5:

大腸画像検査を応用した過敏性腸症候群の診断と治療―病態把握と認知療法のツールとして―

演者 水上 健(NHO久里浜医療センター内視鏡検診センター)
共同演者 鈴木 秀和(慶應義塾大学消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大学消化器内科)
抄録 IBSの病態は脳腸相関異常・知覚過敏・腸管運動異常とされ,大腸検査では異常がないとされる.近年は診断・治療過程で大腸鏡を30%が経験する(JROAD-III).大腸検査の目的は腫瘍や炎症の検出で腸管運動や形態評価は目的とされない.これまで我々は腸管容積の変動を抑えることで無麻酔でも苦痛の少ない大腸鏡挿入法「浸水法Dig Endosc2007」を開発・実施しているが,鎮痙剤により正常者の腸管運動を抑制して大腸鏡を施行すると検査自体の心理的負荷でIBSの遷延性腸管運動異常が惹起され下痢型のほとんどに蠕動が,便秘型の一部に分節型運動が見出される.その後の検討で腸管運動異常が観察されないIBSが確認され,同群は症状発現に関連するストレスを自覚せず,運動量低下につながるライフイベントがあり,硬便に続く軟便・下痢が特徴で下行結腸間膜やS状結腸回転異常など形態異常があることが判明した【消化器心身医学 2010 17(1)33-39】.ストレスが症状発現に関与しないIBS58例をCTコロノグラフィーで検討したところ,通過障害の要因と考えられる捻じれが全例で見いだされ,下痢症状を有するIBSに捻れの口側腸管径の2倍以上の拡張が有意に高頻度に見出された.下痢症状を有する症例であっても少量の緩下剤と通過障害の原因部位のマッサージやエクササイズ指導によりほぼ全例で腹痛・便性状の改善が見られ,腸管形態異常を有するIBS患者の下痢症状にはS状結腸軸捻転症や大腸イレウスの腸管内容が水様便であることと同様のメカニズムが関与していると考えられる【消化と吸収 2011 4(3)277-285】.無麻酔大腸鏡により器質的疾患の除外とともに症状のメカニズムを検査中に患者自身が認知・納得することが可能で,ストレスで誘発される「腸管運動異常型」とストレスの関与のない「腸管形態異常型」に分類して病態に応じた効果的な治療選択が可能である.実際の治療経過を含めて提示する.
索引用語