セッション情報 ワークショップ11

硬化性胆管疾患の現状と問題点

タイトル W11-2:

IgG4関連硬化性胆管炎と原発性硬化性胆管炎の相違点―IgG4関連硬化性胆管炎診断基準2012をふまえて―

演者 近藤 啓(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
共同演者 内藤 格(名古屋市立大学消化器・代謝内科学), 中沢 貴宏(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
抄録 【目的】近年,IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)に対する診断基準2012が本邦より提唱されたが,原発性硬化性胆管炎(PSC)は重要な鑑別疾患である.今回我々は診断基準2012を踏まえ,両者の相違点を明らかにする目的で検討を行なった.【方法】IgG4-SC75例,PSC46例を対象とし,診断基準2012の診断項目である胆管像(ERC,MRCP),血液像,他臓器病変,病理像,ステロイド反応性,診断能につき比較検討を行なった.【成績】1)胆管像(ERC):IgG4-SCに有意な所見としてsegmental stricture,long stricture,下部胆管狭窄(p<0.001),PSCに有意な所見として,帯状狭窄,数珠状所見,剪定状所見,憩室様所見(p<0.001)を認めた.(MRCP):ERCPではPSCに有意な所見であった剪定状所見や憩室様所見はMRCPでは認めにくかった.PSCに特徴的な所見は肝内胆管における帯状狭窄,剪定状所見,多発狭窄(p<0.001)と,肝外胆管における胆嚢腫大と多発狭窄(p<0.001)であった.2)血液像:IgG4値はIgG4-SC 619mg/dl,PSC 54mg/dlとIgG4-SCで有意に高値であり(p<0.001),高IgG4血症はIgG4-SC86%,PSC4%と,IgG4-SCで有意に高頻度に認めた(p<0.001).3)他臓器病変:IgG4-SCで自己免疫性膵炎(AIP)を71例(95%),硬化性唾液腺炎を13例(17%),後腹膜線維症を9例(12%)に認めたが,PSCでは上記3病変とも認めなかった.4)病理像:IgG4-SCに対する経乳頭的胆管生検では6/28(21%)で診断基準2012の病理2項目を満たし,切除例では11/11(100%)で3項目以上を満たした.5)ステロイド反応性:IgG4-SCの48/50(98%)でステロイドの反応性は良好であったが,PSC1例では反応を認めなかった.6)診断基準2012診断能:IgG4測定可能であった症例の感度95%(55/58),PSCに対する特異度は100%(0/27)であった.【結論】IgG4-SC,PSCの臨床像は異なり,両者の鑑別に診断基準2012は有用であると考えられた.MRCPも両者鑑別のmodalityになり得る可能性が示唆された.
索引用語