セッション情報 ワークショップ11

硬化性胆管疾患の現状と問題点

タイトル W11-3:

原発性硬化性胆管炎の発症年齢に関する検討

演者 水野 卓(東京大学消化器内科)
共同演者 平野 賢二(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科)
抄録 【目的】本邦では原発性硬化性胆管炎(PSC)の発症年齢が2峰性の分布を示すことが知られているが,発症年齢による臨床像の違いについて十分な検討はなされていない.今回我々は,PSCの臨床像について発症年齢に基づいた検討を行った.【方法】対象は1986~2012年までに,当院消化器内科及び人工臓器・移植外科にて診療を行ったPSC患者81例.発症年齢≦50歳を若年群,>50歳を高齢群とし,比較を行った.【結果】患者背景は男性/女性 46例/35例.発症年齢中央値は36歳(10~79歳)で,1峰性の分布であった.病変分布は肝内のみ/肝内外 25例/56例.炎症性腸疾患(IBD)合併を26例に認めた(潰瘍性大腸炎23例,非特異的腸炎3例).胆道癌合併を10例で認め(肝内胆管癌5例,肝外胆管癌4例,胆嚢癌1例),早期大腸癌を1例認めた.肝移植は16例で施行された(生体14例,脳死2例).死亡は21例で,死因の内訳は肝不全9例・静脈瘤破裂2例・敗血症1例・癌死8例・その他1例と,1例を除いてPSCに関連していた.非移植生存期間の中央値は13年であった.若年群61例と高齢群20例を比較すると,若年群に男性が多く(67% vs. 25%,P<0.01),高齢群でIgE高値(>170 IU/ml)が多かった(11/41[27%]vs. 13/16[81%],P<0.01).若年群では肝内外に病変が及ぶものが多く(74% vs. 55%,P=0.11),IBD合併も多いが(36% vs. 20%,P=0.27),有意ではなかった.胆道癌の合併は若年群にのみ認められ(16% vs. 0%,P=0.06),肝移植は若年群で多く施行されていた(25% vs. 5%,P=0.10).非移植生存期間中央値は2群で差を認めなかったが(13年vs. 11年,P=0.61),死因についてみると,若年群では肝不全関連死7例・癌死8例・その他1例に対し,高齢群では5例全例が肝不全関連死であった.【結論】PSCの発症年齢に基づく検討では,非移植生存期間に差は認めなかったが,若年群でのみ胆道癌の合併が認められ,その結果死因の内訳も異なっていた.本邦におけるPSCでは,発症年齢によって病態が異なっている可能性があると考えられた.
索引用語