セッション情報 ワークショップ11

硬化性胆管疾患の現状と問題点

タイトル W11-4:

inflammatory bowel disease(IBD)合併Primary sclerosing cholangitis(PSC)症例の実態とその治療による予後の改善

演者 若山 遊子(慶應義塾大学消化器内科)
共同演者 海老沼 浩利(慶應義塾大学消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大学消化器内科)
抄録 【背景と目的】PSCは胆道系の線維性狭窄・胆汁うっ滞から肝硬変に至る原因不明の難治性疾患で,欧米ではIBDを高頻度に合併することが知られているが,本邦ではその頻度は必ずしも高くないが,近年増加傾向にある.我々は以前PSC患者にsalazosulfapyridine(SASP)が有効であることを報告した(Tada S, et al. J Gastroenterol 2006).今回はIBD合併PSC症例に着目して,腸管病変の詳細ならびに腸管病変のコントロールの必要性を検討した.【対象と方法】1992年から現在までに経験したPSC 50症例の臨床像とりわけ腸管病変とその治療経過を検討した.また,腸管病変に対する治療がPSCの転帰に与える影響を検討した.【結果】PSC 50症例の内訳は,男女比1:1,診断時の年齢は37.1±29.9歳で,既報どおり20歳代と50歳代の2峰性を示した.腸管病変は25/50(50.0%)に合併し,その内訳は,潰瘍性大腸炎(UC)が13例,Crohn病が1例,UCともCrohn病とも鑑別できないunclassified colitisが11例にあった.腸管病変を有する症例は,有意にALP・γGTP値・発症時年齢が低く,Hgb・Alb値が高い傾向にあった.これらの腸管病変に対して19例でSASP,7例で5-ASAにて治療を行った.治療後腸管病変はほぼ消失し,肝機能(ALP・γGTP値)も治療前に比べて有意に改善した.最終的にIBD合併例ではSASP/5-ASA治療例で予後が良好な傾向にあった.【結論】近年若年発症のPSC患者で,腸管病変とりわけUCとも診断できないunclassified colitisを合併しているケースが高頻度にみられた.これらの患者の腸管病変を早期からコントロールすることによりPSCの進行を抑制できる可能性が見いだされた.
索引用語