セッション情報 ワークショップ11

硬化性胆管疾患の現状と問題点

タイトル W11-6:

当科における硬化性胆管疾患に対する診断ストラテジー

演者 村木 崇(信州大学消化器内科)
共同演者 渡辺 貴之(信州大学消化器内科), 浜野 英明(信州大学消化器内科)
抄録 【背景】本邦の原発性硬化性胆管炎(PSC)は欧米と異なり年齢分布にて20歳代に加え60歳代にもピークを認め,中年以降発症の症例には炎症性腸疾患合併例が少ない特徴がある.また,PSCと鑑別を有する二次性硬化性胆管病変は,従来から知られていた二次性硬化性胆管炎に高齢発症が多いIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)が加わった.そして,それらは治療法・予後が異なる.【目的】中年以降発症の硬化性胆管病変の臨床像と診断における問題点と今後の課題を明らかにすること.【対象と方法】2001年から2012年8月の間で発症し,当科にて診療した50歳以上の硬化性胆管病変症例の内,従来から知られていた二次性硬化性胆管炎(胆管悪性腫瘍,胆道の手術・外傷,総胆管結石など)を除いた66例を対象とした.年齢・性別・胆管像・胆管外病変併存率につき検討した.【結果】硬化性胆管病変66例中,IgG4-SCと診断しえた症例は61例,典型的なPSCの胆管像・組織像を呈したのは2例,診断困難例が3例であった.1.IgG4-SC症例:1例胆管癌合併例を認めた.IgG4-SCの内,典型的な膵病変を伴っていなかった狭義のIgG4-SCは10例であり,肝門部胆管癌の診断での切除例を2例に認めた.他,7例は胆管生検で,1例は肝・腎生検にてIgG4陽性細胞形質細胞浸潤を認めた.血清IgG4高値を9例に,胆膵以外のIgG4関連疾患臓器病変を8例に認めた.また,膵を詳細に評価することにより3例で軽微な膵病変を認めた.2.PSC:典型的な胆管像・組織像を呈した2例は炎症性腸疾患を合併していなかった.3.診断困難例:胆管生検にてIgG4陽性細胞浸潤を認めるが胆管像はPSC類似症例など診断確定困難例を3例に認めた.【結論】IgG4-SCの診断にあたっては,AIPを合併していても胆管癌併存例が認められるため,まず複数回の胆管生検にて胆管癌を否定することが必要である.その上で,血清IgG4測定,IgG4免疫染色,胆管外病変の既往・検索,膵の詳細な検討によりIgG4-SCを念頭に精査することが肝要である.それでも診断に難渋する症例が存在し今後のさらなる検討が必要である.
索引用語