セッション情報 ワークショップ11

硬化性胆管疾患の現状と問題点

タイトル W11-9:

IgG4関連硬化性胆管炎と肝門部胆管癌の鑑別

演者 田畑 拓久(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科)
共同演者 来間 佐和子(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科), 神澤 輝実(がん・感染症センター都立駒込病院消化器内科)
抄録 【目的】肝門部の胆管狭窄を伴うIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)と肝門部胆管癌(CC)との鑑別に有用な臨床的および画像的所見を明らかにする.【方法】2000年~2010年までに当院で診断された肝門部胆管狭窄を伴うIgG4-SC 6例とCC 42例を対象とし,それぞれの臨床的特徴,血清学的所見,画像所見,病理学的所見などについて比較検討を行った.【結果】年齢,性別に関して有意差は認められなかった.CCでは閉塞性黄疸が有意に多く(p<0.01),血中の総ビリルビン値およびCA19-9値が有意に高値を示した(p<0.05).DUPAN-2の上昇もCCで有意に多かった(p<0.05).一方,IgG4-SCでは血中のIgG,IgG4値が有意に高値で,血中IgG,IgG4が高値を示す症例数もIgG4-SCで有意に多かった(p<0.05,p<0.01).唾液腺腫大や涙腺腫大はIgG4-SCのみに認められた(p<0.01).膵腫大はIgG4-SCの全例で認められたのに対し,CCでは7例(17%)のみであった(p<0.01).ERC所見に関してIgG4-SCでは全例で肝門部狭窄部の描出が可能であったが,CCでは完全閉塞のため肝内胆管の描出が不可能であった症例が83%(13/15)と高率であった(p<0.01).また,下部胆管狭窄はIgG4-SCの全例に認められたが,CCでは2例(5%)のみであった(p<0.01).さらに,IgG4-SCでは非狭窄部の胆管壁肥厚が有意に多く認められた(100% vs. 2%,p<0.01).胆管生検にて著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を伴う線維化よりIgG4-SCと診断されたのは5例中2例で,胆汁細胞診で胆管癌が診断されたのは28例中18例(64%)であった.ステロイド治療によりIgG4-SCは全てに改善がみられた.【結論】IgG4関連硬化性胆管炎と肝門部胆管癌は,臨床所見,血清学的所見,画像所見,組織学的所見等の組み合せにより多くの例で鑑別可能であるが,鑑別困難例では十分なインフォームドコンセント後のステロイドトライアルも選択肢の一つと考える.
索引用語