セッション情報 ワークショップ11

硬化性胆管疾患の現状と問題点

タイトル W11-11:

硬化性胆管炎の病理

演者 中沼 安二(金沢大学医薬保健学総合研究科形態機能病理学)
共同演者
抄録 硬化性胆管炎は胆管硬化を伴う胆管の炎症性疾患であり,現在,大きく原発性硬化性胆管炎PSC,IgG4関連硬化性胆管炎IgG4-SC,それに二次性(獲得性)硬化性胆管炎の3群に大きく分類される.胆管硬化は胆管の線維化で特徴付けられる.今回,胆管線維化の機序と硬化性胆管炎の鑑別を中心に,硬化性胆管炎の病理を報告する.1)胆管線維化の病理:以下の機序が代表的である.i)胆管上皮自身の関与:胆管上皮から塩基性FGF,PDGFが分泌され,胆管壁や胆管周囲に存在する線維形成細胞を刺激し,線維化に関連する.さらに,胆管上皮そのものが基底膜蛋白や細胞外基質蛋白を分泌する.ii)胆管上皮の上皮-間葉転換(EMT):傷害胆管上皮には,S100A,ビメンチンなどのEMTのマーカーの発現がみられ,TGF-βなどの因子がこれらマーカー発現に関与する.EMTマーカー陽性の胆管上皮は,フィブロネクチン,ラミニンなどの線維化関連因子を発現する.しかし,胆管上皮が間葉系細胞に転換することは知られていない.iii)胆管上皮の老化:胆管上皮は種々の傷害因子により細胞老化を来たし,老化関連分泌形質を発現し,線維化に関連する.iv)その他の細胞の関与:PSCや二次性硬化性胆管炎で,傷害胆管上皮でstem cell factor(SCF)が異所性に発現しており,SCFがc-kitを介して肥満細胞を集積し,これらの細胞からヒスタミン,塩基性FGFやTNFαなどの線維形成性因子が分泌され,胆管線維化に関連することが知られている.また,IgG4-SCでは,胆管壁に浸潤する炎症性細胞,特に制御性T細胞から分泌されるTGF-βが線維化に関連する.2)硬化性胆管炎の病理診断:胆管の線維化そのものは非特異的な病理所見であり,鑑別診断での意義は少ない.浸潤する炎症性細胞であるTreg,IgG4陽性形質細胞,好酸球や静脈の変化,また上皮の変化などがPSC,IgG4-SC,二次性硬化性胆管炎の鑑別診断に役立つ.
索引用語