セッション情報 ワークショップ7(消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と性差

タイトル 消W7-3:

雌雄ラット逆流性食道炎モデルにおけるエストロゲンの食道粘膜傷害に対する影響

演者 眞坂 智寛(東北大・消化器内科)
共同演者 飯島 克則(東北大・消化器内科), 下瀬川 徹(東北大・消化器内科)
抄録 【目的】食道腺癌は圧倒的に男性で多く、その要因の一つにバレット食道や逆流性食道炎の発生が男性優位であることが挙げられる。ヒトの食道胃接合部では、食物由来の亜硝酸塩から高濃度の一酸化窒素(NO)が発生し、雄ラットの逆流性食道炎モデルを用いた検討で、外因性のNO暴露が食道粘膜傷害を増悪させることが報告されている。これまで逆流性食道炎モデルを用いて雌雄間での検討を行った報告はなく、雌雄ラットの逆流性食道炎モデルを用いて、食道粘膜傷害に対する外因性NOやエストロゲンの影響について検討し、ヒトにおけるGERD関連疾患と結びつけることを目的とした。【方法】雌雄のラット逆流性食道炎モデルを作製し、下部食道内腔を傷害増悪因子である外因性NOに暴露させるために、半数に1%アスコルビン酸と0.1%亜硝酸ナトリウムを経口投与した。7日後に食道を摘出し、食道粘膜傷害面積と傷害部位におけるミエロペルオキシダーゼ活性を測定した。また、雄ラットや卵巣摘出後の雌ラットに対して逆流性食道炎モデルを作製後、NO暴露下でエストロゲン投与の影響を同様に検討した。さらに、卵巣摘出ラットに対するmast cell stabilizer(ketotifen)投与の影響も検討した。【成績】NO非暴露時は雌雄間で食道粘膜傷害に有意差を認めなかったが、NO暴露時は雌に比べて雄で有意に増悪した。卵巣摘出雌ラットでは、非摘出ラットに比し食道傷害が増悪したが、卵巣摘出ラットにエストロゲンを投与することで食道傷害が抑制された。雄ラットにおいても、エストロゲン投与により食道傷害が抑制された。卵巣摘出ラットはエストロゲンおよびketotifenいずれかの投与で食道傷害は抑制されたが、それらの同時投与ではそれ以上の傷害抑制効果を認めなった。【結論】外因性NOの食道傷害増悪作用に対してエストロゲンは抑制的に働き、その経路にmast cellが深く関与していることが示唆された。このエストロゲンの抗炎症作用が、ヒトにおけるGERD関連疾患の性差にも深く関与していると考えられた。(Gut in press)
索引用語 逆流性食道炎, エストロゲン