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食道

タイトル PL-004:

食道アカラシアにおける新しい低侵襲治療;POEM 当院における28症例の経験

演者 南 ひとみ(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 山口 直之(長崎大学病院消化器内科), 磯本 一(長崎大学病院消化器内科), 松島 加代子(長崎大学病院消化器内科), 赤澤 祐子(長崎大学病院消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 はじめに;食道アカラシアに対する標準的根治療法は,Heller以来外科的な筋層切開が中心であったが,近年低侵襲内視鏡治療;POEM(Per-oral endoscopic myotomy)が報告され,注目を集めている.同治療法は体表に皮切をおくことなく,症状や病態に併せた過不足ない筋層切開が可能な手法であり,これまでに高い治療効果が報告されている.当院では,2010年8月より昭和大学の協力の下,同治療を導入し良好な治療成績を収めている.また,びまん性食道痙攣に対しては,long myotomyの有効性が報告されているが,確立された治療法はない.今回びまん性食道痙攣と診断された2症例に対してもPOEMを施行した.対象と方法;対象は,当院において2010年8月~2012年8月31日までにPOEMを行った術後症例1例を含む食道アカラシア26例,びまん性食道痙攣2例の計28症例(19~84歳,平均52.2歳).全身麻酔下に二酸化炭素送気を用いて,経食道粘膜下層的に食道前壁の10~18cm(平均14.3cm)の内輪筋切開を行った.術後症例では,術後の瘢痕を避けて後壁より同様に約12cmの筋層切開を行った.術前後で上部消化管内視鏡,食道透視,食道内圧検査を行い,また自覚症状スコアを比較した.結果と考察;全例において,縦隔炎等の重篤な合併症は認めなかった.平均手術時間は98.1分間(75~160分間)であり,術前後で食道内圧(平均74.0mmHg→22.4mmHg),食道透視像,自覚症状(Ekcardt score 6.7→0.7)はいずれも著明に改善した.術後出血2例(術後1日目1例,10日目1例)を認めたが,いずれも保存的に軽快した.びまん性食道痙攣症例では,切開側で食道体部の異常収縮が消失し,自他覚所見とも劇的に改善した.結論;POEMは,低侵襲下に食道アカラシアおよび類縁疾患における自・他覚所見を有意に改善した.今後びまん性食道痙攣等を含む食道機能性疾患に対する標準治療となる可能性があるが,さらなる症例の集積や今後の長期成績が待たれる.
索引用語