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食道

タイトル PL-005:

早期食道癌の診断における異常血管間の上皮色調変化“Background coloration;BC”の有用性

演者 南 ひとみ(長崎大学病院消化器内科)
共同演者 磯本 一(長崎大学病院消化器内科), 山口 直之(長崎大学病院消化器内科), 松島 加代子(長崎大学病院消化器内科), 赤澤 祐子(長崎大学病院消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学病院消化器内科), 竹島 史直(長崎大学病院消化器内科), 中山 敏幸(長崎大学病院病理部), 林 徳真吉(長崎大学病院病理部), 中尾 一彦(長崎大学病院消化器内科)
抄録 背景 NBIやFICEなどの画像診断技術により,咽頭・食道領域の早期癌の内視鏡的診断は飛躍的に向上してきた.有馬,井上らによる粘膜の血管構造の変化の重要性に加えて,新食道学会分類では,癌部での背景上皮の色調変化を“inter-vascular background coloration”として追記された.我々は,この所見を“background coloration;BC”とし,その成因についても検討してきた.対象と方法 2007年9月~2011年11月までに当院で内視鏡検査を施行し,食道に病変を認めた153症例221病変のうち,内視鏡と病理との対比可能であった135症例198病変を対象とし,以下の2項目において検討を行った.検討1 BCの有無と組織型,深達度およびIPCLパターン分類を対比し検討した.検討2 連続する47病変に対して,抗Hb抗体を用いた免疫染色の染色性について検討した.免疫染色では,周囲と明瞭な境界を持って染色されたものを(+),染色されない,または境界不明瞭な淡い染色は(-)とした.結果 治療の検討対象となるIPCL type IV,Vのうち,type V病変の97.6%が病理学的にHGIN以上の病変であったのに対し,type IVの17病変中8病変(47.1%)はLGIN以下であった.IPCL type IVにBCを加味したところ,正診率は70.6%まで上昇し,BC単独での癌・非癌の正診率は86.4%であった.抗Hb抗体染色では,Hb抗体(-)6病変,(+)41病変であり,BC陽性の36病変中34病変(94.4%)でHb抗体陽性,BCと抗Hb抗体の一致率は80.9%であった.考察 BCを加味することで,IPCL type IVの正診率は有意に向上し,type IIIおよびVにおいても正診率は上昇した.またBCの成因として,病変部における扁平上皮癌細胞内にHbの構成成分が存在している可能性がある.結論 BCは咽頭・食道領域の早期癌の診断において有用と考えられた.BCの成因には扁平上皮癌細胞内のHb成分が関与している可能性が考えられた.
索引用語