セッション情報 プレナリー セッション

タイトル PL-009:

高齢者胃癌手術後真菌感染症に対する早期診断治療の探索的検討

演者 並川 努(高知大学外科1)
共同演者 宗景 絵里(高知大学外科1), 志賀 舞(高知大学外科1), 北川 博之(高知大学外科1), 駄場中 研(高知大学外科1), 岡本 健(高知大学医療管理学), 小林 道也(高知大学医療管理学), 花崎 和弘(高知大学外科1)
抄録 【背景】消化器外科手術において深在性真菌症は確定診断が困難な上,重篤な臓器障害を合併することもあり早期治療が重要とされている.今回,真菌症高リスク群の高齢者に対する胃癌手術に対し血中β-Dグルカン(βDG)値を指標とした抗真菌剤の早期投与の有用性について検討した.【対象と方法】胃癌に対して手術を施行した70歳以上の高齢者で同意の得られた81人を対象とした.手術後第1日目の血中βDGテストが11 pg/ml以上であった症例を抗真菌剤投与群(投与群)と抗真菌剤非投与群(非投与群)に振り分けし,術後8日目に再度血中β-DGを測定した.血中βDG値,体温,白血球数,CRP等の炎症指標の変化について検討した.【結果】32.1%(26/81)にβDG陽性で,投与群,非投与群はそれぞれ13例であった.βDG陽性群のβDG中央値は18.2 pg/mlで,βDG陽性群はβDG陰性群に比してStage III/IVの割合が有意に高かった(44.1% vs. 23.4%,P=0.049).またβDG陽性群は心血管系合併症あるいは肝機能異常合併率が高い傾向にあった.抗真菌剤投与7日目のβDG正常値回復率は投与群,非投与群とも76.9%であった.投与群の第8病日の発熱は非投与群に比し有意に低く抑えられていた(36.8°C vs. 37.2°C,P=0.045).投与群,非投与群のβDG変化量は10.0 pg/ml,12.7 pg/ml,変化率は37.6%,32.1%,発熱の変化量は0.6 ℃,0.7 ℃,CRPの変化量は1.6 mg/dl,1.2 mg/dl,白血球数の変化量は1050/mm3,1000/mm3で,いずれも有意差は認めなかった.手術後第1日目のβDGが陰性であった55例は発熱の変化量は0.4℃,CRPの変化量は1.2 mg/dl,白血球数の変化量は1700/mm3で,術後8日目のβDG値も全て陰性であった.【結語】進行度の高い高齢者胃癌はβDG値が高く,深在性真菌症の高リスク群である可能性が高いことが示唆されたが,抗真菌剤早期投与の有用性についてはさらなる検討が必要である.
索引用語