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肝硬変

タイトル PL-016:

非侵襲的門脈圧予測因子に関する検討

演者 林 洋光(熊本大学大学院消化器外科学)
共同演者 別府 透(熊本大学大学院消化器外科学), 近本 亮(熊本大学大学院消化器外科学), 生田 義明(熊本大学大学院消化器外科学), 橋本 大輔(熊本大学大学院消化器外科学), 今井 克憲(熊本大学大学院消化器外科学), 新田 英利(熊本大学大学院消化器外科学), 蔵元 一崇(熊本大学大学院消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大学大学院消化器外科学)
抄録 【背景】門脈圧の上昇は門脈-体循環のシャント形成さらには食道・胃静脈瘤発生の一因にもなり,門脈圧の非侵襲的モニタリングは門脈圧亢進症のスクリーニングにも繋がる.今回,非侵襲的門脈圧予測因子に関して検討を行った.【方法】2006年から2008年の間に,肝腫瘍(悪性39例:良性1例)に対する処置として門脈塞栓術などで門脈穿刺を要した症例40例(正常肝/慢性肝炎/肝硬変:13/17/10例)において,門脈圧(水柱圧)を測定し非侵襲的に利用可能な臨床因子との関連を検討した.【結果】40例における平均門脈圧は202±114mmH2Oであった.術前の血小板数,PT,Alb,NH3,血清胆汁酸,ヒアルロン酸,ICG15分値,脾臓体積,APRIなどの臨床因子を用いて,門脈圧との関連について重回帰分析を用いて解析したところ,血清胆汁酸(P<0.001)と脾臓体積(P=0.002)が有意な因子として抽出された.門脈圧予測式は,門脈圧(mmH2O)=血清胆汁酸(μmol/L)×2.593+脾臓体積(cm3)×0.416+65.929(R2=0.698)で表された.門脈圧上昇に伴って,血清胆汁酸が増加する臨床的背景を探るために,37例で末梢血(PeV),上腸間膜静脈血(SMV),脾静脈(SPV)血中の胆汁酸濃度を比較検討した.門脈圧200mmH2O以下の23例では,PeV,SMV,SPV中の胆汁酸濃度(中央値)は7.6(1.9-31.2),12.2(1.3-216.6),3.8(0.4-26.3)μmol/Lと,SMV中胆汁酸濃度はPeV,SPVと比べて有意に高かった(共にP<0.01).一方,門脈圧亢進症(>200mmH2O)を伴った14例では,PeV 36.2(5.0-95),SMV 44.6(13.6-502.7),SPV 18.8(2.6-181.1)μmol/LとSMVの胆汁酸濃度はSPVに比べて有意に高いものの(P=0.001),PeVとの差はなかった(P=0.167).【結語】侵襲的手技を行う前に,血清胆汁酸と脾臓体積を測定することにより門脈圧を非侵襲的にモニタリングすることが可能であると考えられた.門脈圧亢進症に伴うPeV中胆汁酸濃度上昇はSMV由来の胆汁酸濃度に起因することが示唆された.
索引用語