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肝硬変

タイトル PL-017:

難治性腹水に対する腹腔―静脈シャントの適応とその限界

演者 成島 陽一(国立病院機構仙台医療センター外科)
共同演者 島村 弘宗(国立病院機構仙台医療センター外科), 武田 和憲(国立病院機構仙台医療センター外科)
抄録 【はじめに】今回我々は過去12年間に施行した腹腔―静脈シャント(以下PVS)の治療成績について検討した.【症例】2001年1月から2012年8月までに当科で施行したPVSは21症例で計30回施行した.全てDenver社のシャントシステムを用いた.21例の内訳は男性16例,女性5例.年齢は48歳から80歳(中央値65歳).癌性腹水の症例はなく全例肝性腹水.腹水の原因は,切除不能膵頭部癌の門脈狭窄の1例を除き20例は肝硬変(C型肝炎18例,アルコール性2例)によるもので,このうち2例は肝細胞癌に対する肝切除術後の合併症であった.【結果・考察】1)30回のPVS造設直前のChild-Pugh分類はBが14例,Cが16例でPVSによる腹水改善は全例に認められた.2)PVS閉塞による入れ替えは9回行われたが,その開存期間は1か月から22か月で平均4.3か月,中央値は2か月.閉塞の原因は静脈側カテーテル閉塞,上大静脈血栓が4例,バルブチャンバー内の閉塞が3例,腹腔側カテーテル周囲の蛋白凝集が1例.3)初回PVSからの生存期間は最長で27か月.死亡例は13例で生存期間は0―27か月(平均5.5か月,中央値3か月)で,11例は6か月以内の死亡であった.4)その死亡原因は,腫瘍の増大による2例以外の9例(敗血症5例,腹膜炎1例,DIC2例,原因不明の肝不全1例)はシャント造設が影響したもの考えられた.5)9例のChild-Pugh分類はBが1例,Cが8例,造設前のPT値は70未満であった.6)造設後の血小板は平均で造設前の53.5%(最大16.9%)に減少しており,血小板減少を伴う症例には注意が必要である.【結果】難治性腹水に対するPVSの腹水改善効果は劇的である反面,造設後の様々な合併症や予後を考えた場合,その適応は慎重でなければならない.適応としてはChild-Pugh10点以下(PT値70%以上),血小板8万以上が理想と思われるが,それ以上に余命も含めた充分な説明とコンセンサスが必要と考える.
索引用語