セッション情報 プレナリー セッション

肝癌

タイトル PL-025:

傾向スコアを用いた高齢肝細胞癌症例に対する治療介入意義の検討

演者 須田 剛士(新潟大学消化器内科学)
共同演者 兼藤 努(新潟大学消化器内科学), 青柳 豊(新潟大学消化器内科学), 上村 顕也(新潟大学消化器内科学), 田村 康(新潟大学消化器内科学), 高村 昌昭(新潟大学消化器内科学), 五十嵐 正人(新潟大学消化器内科学), 川合 弘一(新潟大学消化器内科学), 山際 訓(新潟大学消化器内科学), 野本 実(新潟大学消化器内科学)
抄録 【目的】80歳以上の高齢肝細胞癌症例に対する治療介入の是非を予後の観点から明らかとする.【方法】性別・年齢別余命が公開されている1996-2010年の間に当院で肝細胞癌に対する初回治療を受け,死亡あるいは1年以上の経過観察が可能であった330例を対象とし,予後を統計学的に解析した.治療法選択に際しては,年齢自体を選択根拠とはしなかった.性別,HBsAg,anti-HCV,Child分類,腫瘍ステージ,AFP,L3分画,PIVKAII,治療法(局所治療:手術/RFA/PEIT,IVR:TACE/TOCE,化学療法:肝動注/全身,その他)の9項目を用いた多変量ロジスティック回帰分析により各症例の生死に関する傾向スコア(PS)を算出し,80歳以上の高齢群30例に最も近似のPSを有する30例を抽出し,対照群とした.PS算出の妥当性はROC曲線下面積(AUROC)で判定した.生存実日数,あるいは余命に対する生存率(%LE)を指標としたLog-rankテストにより,高齢群と対照群間で予後を比較した.【結果】各群の年齢中央値は82歳と71歳で,高齢群で有意に高値であった(p<0.0001).高齢群と対照群のPS中央値はそれぞれ37.6%と37.5%で有意差を認めず(p=0.98),各症例間でのPSの差は0.032%(中央値)であった.330例の観察期間中央値は709日(12.2%LE),生存期間中央値は1594日(25.1%LE)で,PSによる生死予測の有用性が示唆された(p<0.0001,AUROC=80.0%).最終的に高齢群と対照群間で生存実日数(p=0.38)と%LE(p=0.88)に有意な差異は認められなかった.【結論】算出されたPSの生死予測に関する妥当性,ならびにPSの2群症例間における高い近似性より,患者背景は両群間で均質化されていると推察される.実日数と%LEの両者で2群間の生命予後に有意差が認められなかったことから,単に高齢であることは治療介入の障害ではなく,80歳以上の高齢肝細胞癌症例においても,積極的な治療により生命予後の改善がもたらされていることが示唆された.
索引用語