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ウイルス肝炎

タイトル PL-041:

C型肝硬変症に関与する宿主一塩基多型の検討

演者 上村 慎也(日本大学消化器肝臓内科学分野)
共同演者 田村 彰教(日本大学消化器肝臓内科学分野), 森山 光彦(日本大学消化器肝臓内科学分野)
抄録 【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)による活動性肝炎において,肝の線維化進展速度には個人差が認められる.今回我々は,より積極的な治療を要する対象を宿主因子から見出す方法として,HCV感染における肝線維化進展に関与する宿主の一塩基多型(SNP)の検出を試みた.【方法】全ゲノム関連解析において,肝硬変群195名と非肝疾患群1,553名に対しhigh density oligonucleotide arraysを用い272,842箇所のSNPの1次解析を行い,有意差を認めた3,877箇所についてGeneChip SNP arrayを用い,先とは別の肝硬変群753名と非肝疾患群1,358名の間で2次解析を行った.この結果に対しAllele頻度p<0.01等を条件に選択した上位29箇所の肝硬変と関連の示唆されたSNPについて,国際データベースに登録のある日本人健常者群とC型肝硬変群80名の間でTaqMan assayを用い検出,解析を行った.【結果】C型肝硬変や肝線維化進展との関連報告が無い4箇所のSNPについて有意差(p<0.05)を認めた.2箇所(rs2293766,rs1989972)は遺伝子内(各々ZAN遺伝子,TGFBI遺伝子)に,2箇所(rs1877033,rs4805439)は遺伝子外に存在した.また,肝生検時に慢性肝炎と確認された者のうち,生検実施後5年以降も慢性肝炎の病期であった40名と,肝硬変に至った23名の集団について,上記4箇所のリスクとなる遺伝子型と肝生検施行時を基準とした病期の進展について検討したところ,rs1989972において,リスクとなる遺伝子型を持つ集団から肝硬変に至った者と,持たない集団から肝硬変に至った者との相対危険度は2.59(95%CI 1.06-6.36)であった.【結論】今後これらのSNPについては,遺伝子発現への影響や肝炎の各病期と線維化進展との間に関連性を示すか等の検討をすすめることで,HCV感染者における肝線維化進展ハイリスク群を発見する一助となる可能性が示唆された.
索引用語