セッション情報 | プレナリー セッションウイルス肝炎 |
---|---|
タイトル | PL-042:C型慢性肝炎におけるhepcidin分泌不全機序の解析 |
演者 | 藤田 尚己(三重大学消化器内科学) |
共同演者 | 宮地 洋英(三重大学消化器内科学), 杉本 龍亮(三重大学消化器内科学), 諸岡 留美(三重大学消化器内科学), 田中 秀明(三重大学消化器内科学), 岩佐 元雄(三重大学消化器内科学), 小林 由直(三重大学消化器内科学), 竹井 謙之(三重大学消化器内科学) |
抄録 | 【目的】Hepcidinは鉄増加に反応し主に肝細胞で産生・分泌され,腸管での鉄吸収を抑制する体内鉄調整分子であり,C型慢性肝炎(CHC)にみられる鉄過剰の主原因分子とされる.近年肝細胞内におけるhepcidin発現調整機構の詳細が明らかにされ,それによると体内鉄動態がBMP6によりsensingされ,これが細胞表面のreceptor(BMP-R)に結合すると,Smad1/5/8のリン酸化に引き続くSmad4との結合による核内移行の結果,hepcidin promoter活性が上昇すると考えられている.今回CHCにおけるhepcidin発現調整機構につき検討した.【方法】対象は当科にて肝生検術が施行されたCHC101例(年齢=56.4歳.M/F=49/52例).肝組織よりmRNAを抽出しreal-time PCR法にて定量した.蛋白量はWBやIF法にて,血清hepcidin-25はSELDI-TOF/MS法にて測定した.対照として非C型肝疾患(non C)68例(年齢=52.9歳.M/F=32/36例.CHB/PBC/NAFLD/ALD/その他=21/20/10/7/10例)を用いた.【成績】血清hepcidin値はnon C群に比しCHCで有意に低値であった(21.2±20.6 vs 29.2±19.6 ng/mL,P=0.01).BMP6,hemojuvelin,BMP-R1/R2発現量に有意差はなかったが,Smad4やその応答分子であるId1はCHCで低値であった(Smad4/ferritin=8.0±5.2 vs 13.4±8.1,P<0.01.Id1/ferritin=5.1±2.9 vs 9.1±4.2,P<0.01).また,Smad1/5/8のリン酸化蛋白量やSmad4の核内移行もCHCで減少していた.抑制系SmadであるSmad6や7の発現を検討するといずれもCHCで有意に増加していた(Smad6=1450±1510 vs 718±934,P<0.01.Smad7=2900±3010 vs 1570±1680,P<0.01).【結論】CHCにみられる鉄過剰は肝障害や肝発癌と密接に関連しており,除鉄療法によるALT低下効果のみならず発癌抑制の可能性も指摘されている.その鉄過剰の原因となるhepcidin分泌不全はHCV感染肝細胞内におけるBMP-Smad signalingの調整異常に起因しており,今後,同機序を介したCHCに対する新たな鉄過剰改善薬の開発が期待される. |
索引用語 |