セッション情報 プレナリー セッション

NAFLD

タイトル PL-046:

脂肪性肝炎を自然発症する過食肥満マウスの腸管病変と病態的意義,probioticsの効果

演者 池田 瑛(筑波大学フロンティア医科学)
共同演者 蕨 栄治(筑波大学医学医療系生命医科学域), 正田 純一(筑波大学医学医療系医療科学)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)は肥満や生活習慣病を基礎に発症する進行性の肝障害である.その成因には,腸内細菌由来のリポ多糖が実験的にNASHを発症させること,抗菌剤の投与により肝病態が改善することより,腸管と肝の相互作用が注目されている.一方,我々の作製したp62遺伝子ならびにNrf2遺伝子の二重欠失マウス(p62:Nrf2-DKO)は,通常食餌による飼育下で,約10週齢以降に過食による肥満と単純性脂肪肝を呈し,約30週齢以降にNASHを発症するマウスである(特許申請中).今回は,p62:Nrf2-DKOの腸管病変の解析を行い,また,probioticsの長期投与によるNASHの病態改善効果を検証した.【方法】野生マウス(WT)とp62:Nrf2-DKOの肝,腸管,内臓脂肪組織について病理形態を観察した.また,両マウスに対して10週齢からprobiotics(VSL#3)を投与し,観察ポイントを25週と45週とした.VSL#3は水に溶解し(4.5億colonies/mL),給水瓶による自由摂取とした.【結果】p62:Nrf2-DKOの10週齢(肥満前)において,腸管では腸管上皮の低層化,炎症細胞浸潤,上皮の脱落や潰瘍形成が生じていた.Lactulose/mannitolおよびsucralose/mannitol(S/M)試験による腸管バリアー機能の解析では,p62:Nrf2-DKOはS/M値が有意に高値であり,腸管バリアー機能が低下していた.内臓脂肪組織では炎症性細胞浸潤が顕著であった.また,肝では炎症性サイトカインとToll-like受容体の発現レベルは,WTの2-3倍と高値であった.一方,probioticsの長期投与により,p62:Nrf2-DKOにおける腸管上皮の低層化,内臓脂肪の炎症性細胞浸潤,NASH肝病変は軽減した.【結論】NASHの病態では,腸管バリアー機能の低下はリポ多糖等による自然免疫活性亢進を誘発し,肝障害の進展に重要な因子であると考えられる.今後,probioticsはNASH治療の有用な選択肢の一つとなる可能性がある.
索引用語