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NAFLD

タイトル PL-049:

門脈結紮により誘導された肝前駆細胞の分離と機能解析

演者 酒井 宏司(信州大学消化器外科)
共同演者 増尾 仁志(信州大学消化器外科), 福島 健太郎(信州大学消化器外科), 横井 謙太(信州大学消化器外科), 北川 敬之(信州大学消化器外科), 野竹 剛(信州大学消化器外科), 古澤 徳彦(信州大学消化器外科), 本山 博章(信州大学消化器外科), 清水 明(信州大学消化器外科), 横山 隆秀(信州大学消化器外科), 小林 聡(信州大学消化器外科), 宮川 眞一(信州大学消化器外科)
抄録 【背景と目的】マウスやラットの成体から分離された肝非実質細胞分画中には肝前駆細胞様の性質を示す細胞が存在し,肝細胞が増殖できない重篤な肝障害が起きたときに増殖することが知られている.門脈塞栓術は拡大肝葉切除の前治療として臨床で広く利用されており,塞栓葉の萎縮は肝細胞自体の萎縮とapoptosisによるとされている.門脈結紮により肝前駆細胞が増殖する可能性がある.本研究ではマウス門脈結紮モデルで肝前駆細胞の増殖が誘導されることを確認し,さらに肝前駆細胞の簡易な分離方法の確立,その発現遺伝子の解析,in vitroでの分化誘導を目的とした.【方法と結果】C57BL/6Jマウスの門脈一次分枝を結紮し,術後肝非実質分画を分離培養したところ,上皮様細胞のコロニーが形成された.さらに限界希釈法によりsingle cell cloningを行い,6ヶ月以上維持可能な上皮様細胞集団(Portal branch-ligation-stimulated hepatic cells:PBLHCs)を分離し得た.RT-PCRによる解析ではPBLHCsはck19,albuminをはじめ,前駆細胞のマーカーであるsca-1,CD44,Hmga2を発現していた.FCMによる解析ではPBLHCsの70%以上がSca-1陽性かつCD44陽性であり,50%強がCD133陽性であった.PBLHCsをmatrigel上で培養するとRT-PCRで成熟肝細胞マーカーの発現が増加し,アンモニア代謝活性,尿素合成活性が増加した.また,spheroid培養によってもalbuminの発現が増加した.PBLHCsをゲル内で3次元培養を行うと,cyst様の構造を形成し,培養を継続すると枝分かれ様の形態を示し,胆管上皮細胞への分化が示唆された.成体肝の免疫組織染色では胆管上皮にHMGA2の発現が認められ,門脈結紮を行うと,HMGA2陽性細胞は肝実質内に向かって進展増殖していた.【結論】マウスの門脈一次分枝を結紮することにより,肝細胞および胆管上皮細胞に分化しうる肝前駆細胞が増殖し,簡便な方法で分離できる.
索引用語