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胆道

タイトル PL-054:

BilINとPanINの病理組織学的特徴に関する比較検討

演者 佐藤 保則(金沢大学形態機能病理学)
共同演者 原田 憲一(金沢大学形態機能病理学), 佐々木 素子(金沢大学形態機能病理学), 中沼 安二(金沢大学形態機能病理学)
抄録 【目的】Biliary intraepithelial neoplasia(BilIN)は多段階発癌を示す胆管癌の前癌・初期癌病変として位置付けられ,膵臓のPanIN(pancreatic intraepithelial neoplasia)との対比を考慮している.BilINとPanINの個々の臨床病理学的特徴に関する解析は進行しているが,BilINとPanINの比較は十分に行われていない.今回,BilINとPanINの病理組織学的な特徴を比較検討した.【方法】対象は肝門部胆管癌(肝内結石症合併)25例と膵癌(浸潤性膵管癌)22例の外科的切除材料.ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用い,MUC1,MUC2,MUC5AC,CEA,S100P,p53,cyclin D1,p21に対する免疫染色を行った.粘液産生はアルシアン・ブルー染色で評価した.染色結果は3段階で半定量的に評価した.【結果】HE染色標本上,腸型形質を示す上皮はBilINでは低頻度にみられたが,PanINでは認めなかった.これに対応してMUC2の発現もPanINではほとんどなかった.粘液産生はBilINよりPanINで多い傾向があり,特にPanIN-1A/1BではBilIN-1と比較して粘液が強陽性を示す例が有意に多かった.MUC1,MUC5AC,CEA,cyclin D1,p21の発現は,BilINとPanINともに異型度が増すにしたがいほぼ同程度に増加した.S100Pも異型度の増加とともにその発現が増加したが,BilIN-1よりPanIN-1A/1Bでの発現が有意に多かった.p53の発現はBilIN-1/2,PanIN-1/2での発現はほとんどなく,BilIN-3でも低頻度であったが,PanIN-3におけるその発現は明らかに高率を示した.【結論】BilINとPanINには共通点ともにいくつかの病理組織学的な相違点があり,胆管癌と膵癌の発癌過程が必ずしも同一ではないことを反映した結果と考えられた.
索引用語