セッション情報 プレナリー セッション

大腸 腫瘍

タイトル PL-064:

大腸癌におけるchorionic gonadotropin-βの過剰発現によるEMTへの関与の検討

演者 川俣 太(北海道大学消化器外科学分野一)
共同演者 本間 重紀(北海道大学消化器外科学分野一), 西原 広史(北海道大学腫瘍病理学講座), 長津 明久(北海道大学消化器外科学分野一), 旭 火華(北海道大学消化器外科学分野一), 藤好 真人(北海道大学消化器外科学分野一), 蒲池 浩文(北海道大学消化器外科学分野一), 高橋 典彦(北海道大学消化器外科学分野一), 神山 俊哉(北海道大学消化器外科学分野一), 武冨 紹信(北海道大学消化器外科学分野一)
抄録 【背景,目的】Chorionic gonadotropin(HCGβ)は,本来絨毛性組織で産生されるが,時に低分化の消化器癌でHCGβが産生され,予後予測マーカーとなることが知られている.HCGβは上皮間葉系移行(EMT)を誘導する代表的な分子のTGFβと発生学的に共通の塩基配列を有しており,今回,大腸癌のHCGβ発現の意義,およびEMTへの関与を検討した.【対象,方法】(1)2002~2004年の当科での大腸癌91切除症例を対象とした.抗HCGβ抗体にて免疫組織化学染色を行い,臨床病理学的因子との関与を検討した.(2)HCGβ過剰発現大腸癌細胞株(LoVo-HCG,HCA7-HCG,T84-HCG)を樹立.増殖能,浸潤能(invasion assay)をコントロール大腸癌細胞株(LoVo-GFP,HCA7-GFP,T84-GFP)と比較検討.さらにWestern Blot法,EMT PCR Arrayを用いた網羅的解析にて,HCGβ過剰発現により誘導された遺伝子の解析を行った.【結果】(1)切除標本による検討:大腸癌組織でのHCGβ高発現(5個以上の腫瘍細胞集塊を認めるもの)は21例(23.1%)に認め,HCGβ高発現群は,組織学的分化度(P=0.041),肝転移(P=0.016)と相関を認めた.また,5年生存率ではHCGβ高発現群(58%)は,HCGβ低発現群(77%)と比較し,予後不良であった(P=0.12).(2)HCGβ過剰発現細胞株による検討:HCGβ過剰発現大腸癌細胞株は増殖能には有意差を認めなかったが,Invasion assayでは,LoVo-HCG,T84-HCGがコントロール群と比較し,有意に浸潤能が高く(P<0.05,P<0.005),Western Blot法にてE-cadherinの減少,Snail2の増加を認めた.EMT PCR Arrayを用いた解析では,HCGβ過剰発現大腸癌細胞株は,Twist1(3.6倍),Snail2(2.1倍)が過剰発現していた.【結語】大腸癌のHCGβ発現は,Twist1,Snail2を介し,EMTに関与することが示唆された.今後,HCGβを分子標的とした新たな治療の発展が期待される.
索引用語