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大腸 感染・他

タイトル PL-071:

消化器疾患におけるプロカルシトニン測定の意義

演者 光井 洋(東京逓信病院消化器科)
共同演者 関川 憲一郎(東京逓信病院消化器科), 小林 克也(東京逓信病院消化器科), 大久保 政雄(東京逓信病院消化器科), 奴田 絢也(東京逓信病院消化器科), 水谷 浩哉(東京逓信病院消化器科), 橋本 直明(東京逓信病院消化器科)
抄録 【目的】プロカルシトニン(以下PCT)は,細菌性の感染症において血中濃度が上昇することが知られ,非細菌性疾患との鑑別に有用とされる.消化器疾患においては,しばしば発熱や炎症所見上昇を伴うが,PCTの測定をおこなった報告は少ない.そこで,当科における諸疾患の患者でPCT測定をおこない,その意義について検討した.【方法】当科でこの1年間に治療をおこなった患者の中で,発熱を伴うか炎症所見高値の場合にPCT測定をおこない,陽性と陰性の場合を比較した.PCTの測定値は0.5 ng/ml以上を陽性とした.【結果】PCT測定をおこなったのは26例(男性19例,女性7例).PCT陽性は7例で,その値は1.2~7.7(平均3.3 ng/ml).4例が肝硬変を基礎疾患として持ち,1例が透析中,2例が担癌患者であった.疾患の内訳は,細菌性腹膜炎,重症急性膵炎,細菌性腸炎各1例の他,胆道・腸管から血中へのbacterial translocationと思われるものが4例で,後4者は基礎疾患有りか処置後であった.PCT陰性は19例で,疾患の内訳は,虫垂炎2例,扁桃炎2例,腎盂腎炎1例,腸炎3例,結核性腹膜炎1例,特発性細菌性胸腹膜炎2例,肝膿瘍2例,肝硬変に伴うもの2例,急性肝炎1例,カテ感染2例,悪性リンパ腫1例であった.PCT陽性の場合は,陰性の場合と比較して,年齢(66 vs 46歳),CRP(12.9 vs 5.4 mg/dl),白血球数(13100 vs 10100/μl),発熱のピーク値(38.7 vs 38.4度)において平均が高値であった.抗生剤の投与期間も,PCT陽性の場合は平均14日と長かった.【結論】消化器内科で遭遇する患者において,重症な炎症をきたした場合や肝硬変などの基礎疾患に発熱・炎症が生じたときにPCTは上昇する可能性がある.一方,細菌感染症でも局所性のものではその上昇は限られる.発熱・炎症をきたす病態ではPCTの測定をおこない,陽性の場合は重症の全身性感染症として,抗生剤の投与延長などを考慮すべきと思われる.
索引用語