セッション情報 口演

膵癌

タイトル O-008:

北陸3県関連施設における切除不能膵癌治療の実態

演者 寺島 健志(金沢大学消化器内科)
共同演者 山下 竜也(金沢大学消化器内科), 金子 周一(金沢大学消化器内科)
抄録 【目的】切除不能膵癌に対してS-1やErlotinibが承認され,治療の選択肢が増えつつある.北陸3県の医療機関における切除不能膵癌症例に対する診療の実態を調査した.【方法】2009年1月から2012年7月までに当科および関連18施設において診療された非切除膵癌症例505例の診療録を後方視的に調査し,うち切除不能例458例の患者背景,治療選択,成績につき検討した.【結果】対象の年齢は中央値74歳,性別は男性/女性=241/217,PSは0/1/2以上=196/166/96であった.UICC StageはII/III/IV=27/115/307,術後再発が9例であった.抗腫瘍療法は317例(69%)で行われ,内容は化学療法/化学放射線療法/放射線療法が272/43/2であった.化学療法のプロトコールとしてGemcitabine(GEM)単剤(G)が173例,GEM+S-1併用(GS)が58例と多く,S-1単剤(S)は23例で選択されていた.S群は多くがGESTの結果が明らかになった2011年1月以降の症例であった.一方,Erlotinibの使用要件を満たす施設で承認以降に診断された58例中,GEM+Erlotinib(GE)が選択されたのは10例のみであった.各群間の患者背景を比較すると,GS群ではG群に比して有意に年齢が若く,男性やPS0の症例の割合が多かった.G群,S群,GS群,GE群の奏効率はそれぞれ5/13/16/10%,生存期間中央値はそれぞれ6.9/10.8/10.1/5.8ヵ月であり,GS群はG群に比して有意に成績が良好であった.化学療法施行例において生存に影響を与える因子を多変量解析にて検討したところ,PS0,UICC Stage III,腹水なし,CRP 2 mg/dL未満に加えてGS群がG群に対して予後良好因子として抽出された.【結論】切除不能膵癌の治療はGEMを中心とした化学療法が行われ,若年の男性で全身状態が良好な症例にGS療法が用いられ,その成績は良好であった.GS療法の予後が良好である可能性も考えられるが,今後,治療効果が期待できる患者を選別しうるバイオマーカーの検索など更なる検討が必要であると考えられた.
索引用語