セッション情報 口演

胃 診断

タイトル O-012:

Helicobacter pylori血清抗体検査と便中抗原測定法の不一致例についての検討

演者 飯野 勢(弘前市立病院内科)
共同演者 下山 克(弘前大学消化器血液膠原病内科), 福田 眞作(弘前大学消化器血液膠原病内科)
抄録 【目的】2010年のHelicobacter. pylori診断法の保険適用の拡大によりH. pyloriの感染診断にあたり,2種類の非侵襲的検査を行うことが可能となった.感染診断では血清抗体検査と便中抗原測定法はいずれも高い感度と特異度を有しているが,両検査の結果が一致しない例も存在する.不一致例の経過を調査し,不一致率,原因および対処法について検討を行った.【方法】青森県弘前市岩木地区の健診を2005年に受診した994人を対象とし,2009年に不一致例について経過を観察した.血清抗H. pylori-IgG抗体価の測定にはE-plateを用い,便中H. pylori抗原はテストメイト ピロリ抗原EIAにより測定した.【結果】2005年のH. pylori血清抗体,便中抗原の不一致は,94例(9.5%)であった.その中の32例(男性15例,女性17例,平均年齢59.0歳)は2009年にも健診を受診した.32例中の24例は2005年時には便中抗原陰性,血清抗体陽性であり,8例は便中抗原陽性,血清抗体陰性であった.2009年の検査では32例中16例(50%)が便中抗原,血清抗体の結果が一致したが,15例が前検査と変化なく不一致のままで,1例が両検査の結果が2005年と異なる結果となった.2005年に便中抗原が陰性で血清抗体が陽性となった24例は,血清抗体価が17 U/ml未満のものが10例,17 U/ml以上のものが14例存在した.抗体価が17 U/ml未満の10例は全て2009年の検査で抗体価が低下し,7例でカットオフ以下となった.2005年検査で便中抗原陽性,血清抗体陰性の8例は,便中抗原がカットオフ値に近いものは存在せず,一様な傾向は認めなかった.【結論】H. pylori便中抗原と血清抗体の測定を同時に行ったところ,不一致率は約10%と比較的高かった.4年後の両検査の一致率は50%程度であり,時間をおいて同様の検査をするのではなく,新たな検査を追加して診断することが望ましいと考えられた.ただし,血清抗体価が17 U/ml未満の場合は,抗体の消失段階である可能性が高いと思われる.
索引用語