セッション情報 口演

胃 H. pylori

タイトル O-019:

小児・青年期におけるH. pylori感染と血清ペプシノゲン値―除菌治療時期の特定に向けて

演者 奥田 真珠美(兵庫医科大学地域総合医療学)
共同演者 一瀬 雅夫(和歌山県立医科大学消化器内科), 菊地 正悟(愛知医科大学公衆衛生学), 佐竹 真(兵庫医科大学地域総合医療学), 福田 能啓(兵庫医科大学地域総合医療学)
抄録 はじめに:H. pyloriは乳幼児期の感染後,持続的な炎症によって胃癌のリスクを上昇させる.このため早期の除菌が望ましい.しかし,小児期早期では再感染のリスクもあり,両者を考慮して除菌時期を検討する必要がある.我々はペプシノゲン(以下PG)を用いて小児・青年期の胃炎の程度を評価し,適切な除菌時期を検討した.対象と方法:和歌山労災病院と兵庫医科大学の関連病院で血液検査を行なった0~20歳の小児・青年423名のPGI,II,I/II比を測定した.H. pylori感染診断には便中抗原,血清抗体を用いた.年齢を0~4,5~8,9~12,13~16,17~20歳の5群に分けて分析した.結果:H. pylori陽性は107名,陰性316名であった.PGIは陰性群では年齢とともに上昇し,31.4から47.2ng/mlに,陽性群でも37.5から85.6に上昇した.PGIIは陰性群では全年齢で6.2~7.5とほぼ一定,陽性群でもほぼ一定で16.5~19.3ng/mlと高値であった.PGI/II比は陰性,陽性群ともに年齢とともに上昇し,それぞれ5.1から8.2,2.4から5.0であった.陰性群のPGI,PGI/II比は13歳以降ほぼプラトーになり,成人の基準値が適用できると考えられた.13歳以降の検体を所謂ABC分類にあてはめるとC群は13~16歳では陽性30検体中3検体,17~20歳の陽性44検体中4検体と約10%であった.考察:年少児ではPGIが低いためペプシノゲン法陽性となる検体が多かったが,13歳以降では成人の基準が適応できると考えられる.13歳以降の小児・青年期の約10%がC群であった.H. pylori新規感染,再感染とも5歳までが大部分である事が示されており,除菌は小学校高学年から中学生で行なわることが望ましいと考えられる.結語:13歳以降では,PGはほぼ成人と同様に判定できること,C群が約1割に認められることから,胃癌予防のための除菌は,この年齢での実施を考慮すべきである.
索引用語