セッション情報 口演

大腸 病態

タイトル O-025:

大腸のアクアポリン3の発現低下により下痢が発症する

演者 五十嵐 信智(星薬科大学薬動学教室)
共同演者 今 理紗子(星薬科大学薬動学教室), 楠 欣己(星薬科大学薬動学教室), 石井 敬(星薬科大学薬動学教室), 落合 和(星薬科大学薬動学教室), 杉山 清(星薬科大学薬動学教室)
抄録 【目的】アクアポリン(AQPs)は浸透圧勾配に従って水を輸送する膜タンパク質であり,様々な臓器に発現している.大腸の粘膜上皮細胞にはAQP3が多く発現しており,便の水分量の調節に重要な役割を担っていると考えられている.しかしながら,その詳細についてはほとんど解明されておらず,下痢発症時におけるAQP3の役割は不明のままである.そこで本研究では,大腸刺激性下剤ビサコジルをツールとして用い,下痢発症時における大腸AQP3の役割について検討した.
【方法】ラットにビサコジルを経口投与し,糞中水分量,大腸AQP3のタンパク質発現量および大腸PGE2含量を測定した.また,マクロファージおよびCOX2の発現局在を免疫組織化学染色により確認した.さらに,マクロファージRaw264.7細胞および結腸癌由来HT-29細胞を用いて,AQP3発現変動メカニズムを解析した.
【結果】ビサコジルを投与したラットの糞中水分量は,投与2時間後から有意に増加し,重度の下痢が認められた.下痢発生時において,大腸PGE2含量の増加およびAQP3発現量の著明な減少が見られた.また,大腸粘膜固有層のマクロファージにおいて,COX2の発現が特異的に亢進していることが確認できた.Raw264.7細胞にビサコジルを添加したところ,添加30分後には培養上清中のPGE2濃度の有意な上昇が見られた.さらに,HT-29細胞にPGE2を添加したところ,30分後にはAQP3の発現量がControlの約40%まで低下することがわかった.インドメタシンをラットに前処理した場合には,ビサコジルを投与してもPGE2含量の増加およびAQP3の発現低下は見られず,下痢も発生しなかった.
【結論】本研究の結果から,大腸粘膜上皮細胞のAQP3の発現量が減少すると下痢が発症することが明らかとなった.さらに,AQP3の発現低下が原因で発症する下痢には,PGE2の産生抑制作用を伴うCOX阻害剤が有効であることが示唆された.
索引用語