セッション情報 口演

大腸 診断

タイトル O-028:

血管造影による大腸憩室出血の診断と治療に関する検討

演者 杉山 宏(木沢記念病院消化器科)
共同演者 杉山 誠治(木沢記念病院消化器科), 吉田 健作(木沢記念病院消化器科), 足立 広和(木沢記念病院消化器科), 中川 貴之(木沢記念病院消化器科), 安田 陽一(木沢記念病院消化器科)
抄録 【目的】大腸憩室出血の内視鏡診断は内視鏡先端に装着した透明フードを憩室周囲に軽く押し当て吸引し憩室を反転,観察することで高率に診断できることを報告してきたが,時に大量出血例や内視鏡的止血術抵抗例を経験する.そこで,血管造影(Angio)によって診断と治療を試みた憩室出血例について検討を試みた.【対象と方法】153例の憩室出血のうち緊急Angioを施行した13例を対象にその診断,治療成績,偶発症,長期的再出血について検討した.【結果】大量出血のため内視鏡が困難な3例にAngioを施行し,うち2例に造影剤の血管外漏出像を認めIVRを施行した.Angioで診断できなかった1例を含む151例にフードを用いた内視鏡を行い,123例で出血部位の診断ができ,うち109例に内視鏡的止血術を施行した.止血困難であった10例にAngioを施行,全例で活動性出血の所見を認めなかったが,止血術に使用したクリップを指標にIVRを施行した.IVRを施行した12例(大量出血:2例,止血不能:10例)中3例に再出血を認めたためIVRを追加施行した.全例,止血に成功した.出血部位の診断不能や止血不能で手術施行例はなかった.内視鏡的止血術抵抗例でIVR後にCTを施行した9例では全例に,クリップで止血術を施行した部位の腸管壁の肥厚を認め,IVR後の再出血はなかった.辺縁動脈レベルで塞栓した4例中3例でIVR後にCRPの最高値が10mg/dl以上となったが,直細動脈レベルで塞栓した8例は全例,10mg/dl未満であった.4例で腹膜炎を,1例で穿孔をきたした.穿孔で手術を行った1例を除く11例に平均観察期間47ヵ月で長期的再出血は認めず,非IVR例に比し長期的再出血は低い傾向にあった(p<0.1:Kaplan-Meier法).【結論】大量出血や内視鏡的止血術に抵抗する大腸憩室出血にはAngioによる診断と治療は有効であるが,IVRは直細動脈レベルで行うべきである.内視鏡的治療で用いたクリップはIVR時の指標と術後の止血効果判定に有用である.再出血を繰り返す長期再出血例にも有効である可能性がある.
索引用語