セッション情報 口演

大腸癌 診断

タイトル O-033:

大腸癌術後モニターリングにおける血清p53抗体の意義について

演者 河原 秀次郎(慈恵医大柏病院外科)
共同演者 渡辺 一裕(慈恵医大柏病院外科), 石山 哲(慈恵医大柏病院外科), 榎本 浩也(慈恵医大柏病院外科), 谷田部 沙織(慈恵医大柏病院外科), 市原 恒平(慈恵医大柏病院外科), 柳 舜仁(慈恵医大柏病院外科), 柳澤 暁(慈恵医大柏病院外科), 小村 伸朗(慈恵医大外科), 矢永 勝彦(慈恵医大外科)
抄録 【緒言】大腸癌術後のモニターリングとして血清CEAの測定が有用とされてきたが,2007年より血清p53抗体測定が健康保険の適応となり,その有用性に関する報告が散見される.しかし血清p53抗体の経時的な測定の意義に関する報告はない.われわれは再発所見がないにもかかわらず血清p53抗体値が高値で推移する症例を経験したので,血清p53抗体の術後経時的変化とそれに影響を及ぼす臨床病理学的因子の有無を検討した.【対象および方法】2007年から2010年の4年間に経験し術後2年以上経過した大腸癌治癒切除症例で術前血清p53抗体が陽性であった24例を対象とし,血清p53抗体値の術後推移について検討した.【成績】血清p53抗体値[median(range)U/ml]は術前9.7(3.1-684),術後1ヶ月4.1(1.2-384),術後6ヶ月3.5(0.4-198),術後12ヶ月2.3(0.4-174),術後18ヶ月2.0(0.4-82),術後24ヶ月1.7(0.4-78)であった.血清p53抗体の陽性率は術後1ヶ月96%(23/24),6ヶ月75%(18/24),12ヶ月71%(17/24),18ヶ月58%(14/24),24ヶ月54%(13/24)で術後2年経過しても半数以上が陽性であった.一方,CEA陽性率は術前33%(8/24),術後1ヶ月17%(4/24),6ヶ月0%であった.対象症例で術後再発例はみられなかった.臨床病理学的因子と術後1年および2年の抗体の陽性率との関係をロジステック解析を用いて検討したが関連因子は見出せなかった.術後2年の抗体陽性率と術前および術後1ヶ月の抗体値の関係をみると,術前値が13 U/ml以上(正常値の10倍)または術後1ヶ月値が5 U/ml以上であった症例は有意に(p<0.01)術後2年値が高値を示していた.【考察】術前または術後1ヶ月の血清p53抗体値が高い症例は,その値が長期に遷延する可能性が高いため,術後再発の診断に注意を要する.術後単発的な血清p53抗体の高値は必ずしも術後再発とは限らず,今後は大腸癌切除例における術前からの血清p53抗体値の経時的な測定の意義の確認が必要である.
索引用語