セッション情報 口演

B型肝炎2

タイトル O-054:

悪性腫瘍に対する化学療法施行後にHBV再活性化を来たした24例の検討

演者 柘植 雅貴(広島大学病院消化器・代謝内科)
共同演者 森 奈美(広島赤十字・原爆病院肝臓センター), 村上 英介(広島大学病院消化器・代謝内科), 相坂 康之(広島赤十字・原爆病院肝臓センター), 吉良 臣介(広島赤十字・原爆病院肝臓センター), 河岡 友和(広島大学病院消化器・代謝内科), 高木 慎太郎(広島大学病院消化器・代謝内科), 平松 憲(広島大学病院消化器・代謝内科), 今村 道雄(広島大学病院消化器・代謝内科), 兵庫 秀幸(広島大学病院消化器・代謝内科), 川上 由育(広島大学病院消化器・代謝内科), 相方 浩(広島大学病院消化器・代謝内科), 高橋 祥一(広島大学病院消化器・代謝内科), 茶山 一彰(広島大学病院消化器・代謝内科)
抄録 【背景・目的】B型肝炎ウイルス(HBV)既往感染者や無症候性キャリアに対して,化学療法や免疫抑制療法を施行することで,HBVが再活性化し,一部で劇症肝炎を発症することが問題視されている.本研究では,化学療法や免疫抑制療法によりHBV再活性化を来たした26例について検討した.【対象】2006年9月~2012年9月までに当院および関連病院にて化学療法または免疫抑制療法を受け,HBVの再活性化を来たした26例(既往感染16例,無症候性キャリア10例).【成績】HBV既往感染例は,いずれも血液悪性腫瘍例で,リツキサン使用例が9例で,ほとんどの症例でステロイドも併用されていた.13例にALT上昇を認め,肝不全による死亡例が2例含まれた.保存血清を用いた解析が可能であった11例中HBV genotype C感染が8例であったが,genotype A感染例も1例含まれた.S遺伝子のsequence解析では,1例でG145R変異が確認され,エスケープミュータント増殖による可能性が示唆された.一方,無症候性キャリアからの再活性化例には,原疾患として血液悪性腫瘍7例,膵癌1例,慢性関節リウマチ1例,舌癌1例が含まれ,いずれもALT上昇を認めた.解析可能であった7例中6例がgenotype Cで,いずれの症例もHBV DNA≧5 Log copy/mlと高値であった.これらの症例において,PC/CP変異解析を行ったところ,PC/CP=M/M症例は1例のみで,9例中7例はPC/CP=mix/Wだった.【考察】既往感染例からの再活性化の中には,HBV genotype A感染例も含まれており,以前より本邦にもgenotype Aが存在したものと考えられる.再活性化例の中にはエスケープミュータントの症例も含まれており,HBV DNAのスクリーニングが重要と考えられた.一方,キャリア発症例では,ALT上昇後に紹介されているケースが多く,注意深いモニタリングと,より早期の治療介入が望まれる.
索引用語