セッション情報 口演

肝硬変

タイトル O-059:

肝硬変に対する分岐アミノ酸製剤投与の有用性の検証

演者 野ツ俣 和夫(福井県済生会病院内科)
共同演者 上田 晃之(福井県済生会病院内科), 松田 尚登(福井県済生会病院内科), 真田 拓(福井県済生会病院内科), 新 浩一(福井県済生会病院内科), 渡邊 弘之(福井県済生会病院内科), 登谷 大修(福井県済生会病院内科), 田中 延善(福井県済生会病院内科)
抄録 【緒言】肝硬変に対するBCAA製剤投与の有用性は,前向き試験であるLotus試験やLIV-EN試験で明らかにされているが,実際治療中の肝硬変症例におけるBCAA製剤の影響を,当院の症例から後ろ向きに検証した.【対象と方法】2001年より当院にてイベントのない肝硬変と診断され治療を受けた523例を対象とし,BCAA無投与群297例(男164例,女133例,年齢65.8±11.2歳)とBCAA投与群226例(男117例,女109例,年齢67.1±9.7歳)間で,イベント(HCC,肝不全,静脈瘤破裂)のフリー生存期間,発生リスクハザード比(HR)および検査値推移の比較検討を行った.BCAAの内訳は,Livact単独(LIV)128例,AminolevanEN単独(EN)13例,両者併用82例であった.方法は,Kaplan-Meier法によるイベントフリーの生存分析を行い,log rank検定及びWilcoxon検定を行い,Cox-比例ハザードモデルによるハザード比を算出した.また,経過観察中のアルブミン値(Alb),血小板数(Plts),総ビリルビン値(T.Bil)の推移を検討した.Alb値の推移は一次回帰曲線の傾きも算出した.【結果】Control群,BCAA群のイベントフリー生存分析は,全例では差がなかったが,Alb3.5g/dl以下の例では,BCAA投与群で生存期間が有意に延長し(log rank 0.0017,Wilcoxon 0.021),イベント発生リスクが半減した(HR:0.450(p=0.0044)).また,50%イベントフリー生存期間は,Control群12ヶ月に比しBCAA群では19ヶ月と1.5倍であった.BCAA製剤別では,LIV単独,EN単独,LIV+EN併用ともControlに比し有意にイベント発生リスクが低かった(HR:0.554,0.153,0.554(p=0.039,0.0162,0.0011).検査値の推移はPlts,T.Bilは不変であったが,AlbはControl群で低下し,負の傾きを示し,BCAA群で上昇し,正の傾きを示した.【結論】Alb値が3.5g/dl以下の肝硬変患者に対するBCAA投与により,Alb値上昇,イベントフリー生存期間延長,発生リスク低下がみられ,BCAA投与が有用であることが検証された.
索引用語