セッション情報 口演

肝癌2

タイトル O-080:

脈管侵襲を伴う肝細胞癌に対する脳死肝移植後補助化学療法の効果と現状

演者 牧 瑛子(マイアミ大学移植外科)
共同演者 内田 浩一郎(マイアミ大学移植外科), 日比 泰造(マイアミ大学移植外科), 土肥 健彦(マイアミ大学移植外科), 西田 聖剛(マイアミ大学移植外科)
抄録 【目的】肝移植は肝硬変を併発するミラノ基準内早期肝細胞癌に対しての治癒治療の一つである.移植後の早期癌再発は生存に関与し,中でも脈管侵襲は再発の危険因子とされている.一方で肝移植後の再発予防としての補助化学療法の有効性は確立されていない.
【方法】2002年3月から2010年12月までに術前画像上ミラノ基準の肝細胞癌275例に対し脳死全肝移植を施行した.摘出肝病理にて脈管侵襲陽性全80例に補助化学療法を推奨し34例が承諾した.抗がん剤レジメはドキソルビシン20週もしくはソラフェニブ6ヶ月とした.化学療法の継続性並びに有無による生存と癌再発を検討した.
【成績】移植後補助化学療法を承諾した34例の内,治療開始可能な症例は26例(76.4%),5ヵ月以上の治療を完遂したのは17例(治療群50%)であった.肝移植後から治療開始までの期間の中央値は95日であった.治療開始不可能・継続困難となった17例(非治療群50%)はそれぞれ,C型肝炎の再発(5例),肝細胞癌の早期再発(6例),心不全(3例),胆管合併症(1例),全身状態低下(1例),経済的理由(1例)であった.病理学的ミラノ基準外かつ脈管侵襲を認めた肝細胞癌(40例)においては,2年無再発生存率は治療群(12例)83.3%で非治療群(28例)42.9%(Log-Rank p=0.006),2年癌再発率は治療群16.7%(2例)で非治療群49.5%(12例)(p=0.047),累積患者5年生存率も治療群56.3%で非治療群37.4%と有意差を認めた(p=0.031).病理学的ミラノ基準内かつ脈管侵襲を認めた肝細胞癌(40例)においては,治療群(5例)では肝細胞癌の再発を認めず,非治療群(35例)では5年以内に7例(20.0%)で再発を認めた.
【結論】脈管侵襲を認める肝細胞癌に対し,移植後補助化学療法は肝細胞癌の早期再発の危険性を減少させる可能性が示唆された.
索引用語