セッション情報 口演

肝癌3

タイトル O-081:

進行肝細胞癌に対する化学療法の治療戦略―肝動注化学療法から鉄キレート剤治療

演者 佐伯 一成(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学)
共同演者 山崎 隆弘(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学)
抄録 【目的】進行肝細胞癌(進行肝癌)に対する本邦の治療アルゴリズムではソラフェニブ(SFB)と肝動注化学療法(HAIC)が推奨されている.今回,当科で開発した新規の鉄キレート剤(DFO)治療(iron-metal manipulating therapy;i-MM療法)の進行肝癌治療の意義について報告する.【方法】1)HAIC:当科でHAICを施行した130例(StageII/III/IVA/IVB=7/39/58/26;Child-Pugh A/B/C=67/62/1).レジメンはlow-FP関連療法である.また,HAIC後の追加治療は,有効(PR)以下の可能症例に施行し,最大治療効果をもって評価した.また鉄代謝調整糖蛋白であるトランスフェリン(Tf)について計測している41症例について予後予測因子を検討した.2)i-MM療法:肝動注無効例の進行肝癌10例(Stage II/IVA/IVB=1/2/7;Child-Pugh A/B/C=3/5/2)に対してDFO10-80mg/kgを24時間持続動注,週3回隔日投与し,有用性を検討した.【結果】1)奏効率33%,予後はMST10.6ヵ月(CR/PR:18.4ヶ月,SD/PD:6.9ヶ月)で,1/3/5/7/10年生存率=41/9/6/5/2%であった.追加治療は73例に施行し,初回治療PD例に対する奏効率は7%と低かった.また,Tf中央値225mg/dLをcutoffとした検討で,Tf高値が有意に予後良好であり,Tfが独立した予後予測因子であった(hazard ratio,0.41;P=0.02).2)奏効率20%(PR2,SD3,PD5),1年生存率20%であり,肝機能不良例にも施行可能であった.【結語】Tf測定にてHAIC治療効果を予測することで,次のステップの治療方針をマネージメントすることが可能である.i-MM療法は,SFBとは違い,肝機能不良例にも治療可能であり,生体内鉄キレーターであるTfがHAIC予後予測因子であることからも,i-MM療法が進行肝癌治療の新たな治療選択肢となり得ることが示唆された.
索引用語