セッション情報 口演

肝癌3

タイトル O-083:

下大静脈腫瘍栓(IVC-TT)を伴う進行肝細胞癌の治療戦略と予後の検討

演者 杉原 誉明(松江市立病院消化器内科)
共同演者 谷村 隆志(松江市立病院消化器内科), 村脇 義之(松江市立病院消化器内科), 三浦 将彦(松江市立病院消化器内科), 田中 新亮(松江市立病院消化器内科), 河野 通盛(松江市立病院消化器内科), 吉村 禎二(松江市立病院消化器内科), 孝田 雅彦(鳥取大学機能病態内科学), 村脇 義和(鳥取大学機能病態内科学)
抄録 【目的】脈管浸潤を伴う肝細胞癌(HCC)の予後は極めて不良である.さらに,腫瘍栓(TT)が下大静脈(IVC),右心房まで進展している症例では,合併症も多く治療に難渋する事が多い.今回我々は下大静脈腫瘍栓(IVC-TT)を伴う進行肝細胞癌症例を後ろ向きに検討し,治療の選択と予後の検討を行った.【方法】2004年から2012年9月の間で当院を含む2施設におけるIVC-TTを伴う進行肝細胞癌症例10例を集計した.観察期間はIVC-TT指摘時から最終生存確認日まで.【成績】症例の平均年齢は70±6.3歳で,男女比は9:1であった.背景肝疾患はHCV 5例,HBV4例,アルコール1例で,肝予備能はChild-Pugh分類A/B/C=8/2/0例.HCC初発時の区域ではS8/S7/S3/S1/全肝 5/2/1/1/1例.平均最大腫瘍径は5.9±2.9cmで,初発時のIVC-TTの合併例は50%(5/10例)であった.HCC Stage(IVA/IVB)9/1例で,腫瘍の占拠率が50%以下は90%(9/10例)であった.治療法の選択では肝動脈塞栓術(TAE)/肝動注化学療法(HAIC)/TAE+HAIC併用 2/6/2例.HAICでは4剤併用療法(CDDP25mg+5-FU500mg+MMC6mg+Epi-ADR30mg)による月1回の動注が70%(7/10例)に実施されていた.放射線照射例は無かった.IVC-TT進展からの生存期間中央値は11.5ヵ月(range 0.2-35ヵ月)であった.2例でIVC-TTに血栓を合併し抗凝固療法を行った.合併症は肺塞栓1例,二次性Budd-Chiari症候群2例であった.直接死因は肝不全3例,癌死3例,消化管出血1例であった.【結論】肝右葉上区域に初発したHCCからIVC-TTが進展する例が多かった.腫瘍の占拠率は比較的低く,肝予備能も保たれている症例が多かったが,IVCへの進展で急速に予後が悪化していた.これまで進行肝癌における下大静脈・右心房進展例の生存期間中央値は1-4か月程度と報告されているが,HAICを中心とした血管内治療を行う事で予後不良とされるIVC-TT症例で予後の改善効果が期待される.
索引用語