セッション情報 口演

門脈圧亢進症

タイトル O-092:

進行肝細胞癌症例の予防的静脈瘤治療は吐血死を予防できる

演者 杉本 貴史(佐々木研究所附属杏雲堂病院消化器肝臓内科)
共同演者 河井 敏宏(佐々木研究所附属杏雲堂病院消化器肝臓内科), 八島 陽子(佐々木研究所附属杏雲堂病院消化器肝臓内科), 佐藤 隆久(佐々木研究所附属杏雲堂病院消化器肝臓内科), 菅田 美保(佐々木研究所附属杏雲堂病院消化器肝臓内科), 佐藤 新平(佐々木研究所附属杏雲堂病院消化器肝臓内科), 小尾 俊太郎(佐々木研究所附属杏雲堂病院消化器肝臓内科)
抄録 【目的】進行肝細胞癌症例では,食道・胃静脈瘤は易出血性・難治性であり,かつ予後不良である為,予防的静脈瘤治療の適応や有効性について未だコンセンサスは得られてない.当院での観察研究より,進行肝細胞癌症例の静脈瘤治療の意義について検討した.【方法】2010年4月から2012年3月までに当院で入院加療した進行肝細胞癌症例136例を対象とした.入院時に上部内視鏡検査を行い,2011年3月までは予防治療を行わずに経過観察の上,出血した際に緊急止血を行い(非予防期間A群),2011年4月以降は内視鏡専門の常勤医師の赴任によりF2RCsign(++)以上の静脈瘤に対して,予防的に内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)を施行した(予防期間B群).両群間で,患者背景(年齢,性別など),肝機能(Child-Pughスコアなど),肝細胞癌(長径,個数),胃食道静脈瘤(F分類,RCsign)を検討項目として,生存率,吐下血の有無について解析を行った.【結果】男性109例,女性27例.平均年齢67.7歳.平均観察期間は7.57ヶ月で,観察期間中に102例(75%)が亡くなられている.背景肝疾患はB/C/nBnC 26/85/28例.Child分類ではA/B/C 72/56/8例.門脈腫瘍栓は94例(69.1%)に認めた.F2RCsign(++)以上は11例(8.1%).吐血症例は16例(11.8%)であり,予防的EVL対象例以外からの吐血例が13例あった.非予防期間A群75例,予防期間B群61例で,MSTはそれぞれ6.67カ月,5.87カ月,ログランク検定P=0.16と有意差を認めなかった.A群,B群で吐下血は10例(13.3%),6例(9.8%)でP=0.52と有意差なく,吐血が原因の死亡は6例(8.0%),0例(0%)でP=0.0066と有意に予防出来た.また,夜間緊急内視鏡症例が3例,1例であり,吐血後当院までたどり着けない症例が3例,1例であった.【結論】進行肝細胞癌症例での予防的静脈瘤治療は,有意な予後延長を来さない.しかし,吐血が原因の死亡を予防する事ができ,休日や夜間の緊急内視鏡も必要性も少なくなり,患者,医療者双方のQOLを改善する事が示唆された.
索引用語