セッション情報 口演

門脈圧亢進症

タイトル O-094:

悪性腫瘍合併難治性腹水例に対する腹腔静脈シャント(PVshunt)の及ぼす影響についての検討

演者 岡本 亮(京都保健会京都民医連中央病院外科)
共同演者 相原 司(医療法人明和病院外科), 飯田 洋也(医療法人明和病院外科), 吉江 秀範(医療法人明和病院外科), 生田 真一(医療法人明和病院外科), 山中 若樹(医療法人明和病院外科), 野口 耕右(京都保健会京都民医連中央病院外科)
抄録 【目的】難治性腹水は悪性腫瘍の終末期において腹部膨満からADL・食欲低下を来たし,また頻回の腹水処置が必要となり退院が困難となるなどQOLを低下させる原因の一つとなっている.今回難治性腹水合併悪性腫瘍症例に対するPVshuntの全身状態,QOLに対する影響や至適適応症例についての検討を行ったので報告する.【方法】対象は2005年1月から2012年3月までの当院および前任施設で施行したPVshunt症例39例中,肝細胞癌および他の消化器癌合併例で癌性腹膜炎によらない腹水を生じた28例.これを退院可能となった群(A群)と退院出来なかった群(B群)とに分けて,両群間の術前術後の血液データ,経口摂取量・ADLの改善,予後等につきretrospectiveに検討した.【結果】A群17例の平均年齢64.4歳,平均生存期間は355日.B群11例は平均年齢67.8歳,平均生存期間31日.両群ともに術後腹部膨満感の解除があり約8割の症例で一時的な経口摂取量の増加とPSの維持・改善が認められた.退院可能であったA群の生存期間中の入院は10ヵ月に1回程度であり頻回の入院を必要とする他療法に比べ良好なQOLを得た.両群間の術前肝腎心機能,栄養状態では有意差は認めず,むしろ腎機能は悪い傾向にあったが術後改善を見た.予後不良であったのは肝細胞癌における高度VP症例であった.一部症例で術後に化学療法が再開できるなど治療選択を拡げる効果がみられた.【考察】今回の検討対象例においてPVShuntの主目的は症状緩和によるQOLの改善にあると考えられ,その点では悪性腫瘍症例においても早急に短期的な症状改善と経口摂取を可能とするメリットがあり,また退院可能例では長期の在宅期間を得ることができQOL改善に寄与している可能性があった.一方で一部に早期死亡例を認めた事や腫瘍学的予後が限られた症例では過大侵襲となる可能性もあり,患者の要望により適応を十分に検討する必要があると思われた.
索引用語