セッション情報 口演

門脈 他

タイトル O-098:

門脈血流動態変化からみた非感染性肝嚢胞開窓術後肝再生の検討

演者 飯室 勇二(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科)
共同演者 岡田 敏弘(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 鈴村 和大(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 近藤 祐一(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 裴 正寛(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 田中 省吾(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 中村 育夫(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 麻野 泰胞(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 平野 公通(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科), 藤元 治朗(兵庫医科大学外科・肝胆膵外科)
抄録 症状を有する非感染性巨大肝嚢胞に対しては,腹腔鏡下嚢胞開窓術が選択されるが,開窓術後に明らかな肝再生が誘導される症例を経験する.しかし,これまでに系統的な解析は報告されていない.今回,その肝再生パターンを分析するとともに,肝再生を制御する因子を,門脈血流動態変化から検討した.【方法】2002年から2012年に当科で腹腔鏡下開窓術を行った単発巨大肝嚢胞症例7例および多発性肝嚢胞症例7例を対象とした.開窓術は,単発症例では可能な限り嚢胞壁を切除し,多発性肝嚢胞では自覚症状の責任嚢胞を含め可能な限り開窓を行った.単発症例では区域別の術前後体積変化と各門脈径の変化をCT/MRIで測定した.多発症例では全肝実質体積変化を測定した.単発症例のうち2例について,コンピュータ流体解析(CFD)で,各門脈枝における術前後の血流分布変化と潅流領域の体積変化を検討した.【結果】単発症例の嚢胞体積は1158±93 mlで,術後全肝再生率との相関は見られなかった.区域別再生率の検討では,嚢胞により圧排を受けていた領域の再生率が,圧迫を受けていない領域に対して有意に大きく(126% vs 111%;P<0.01),門脈枝径も嚢胞の圧排が解除された部位で有意に増大した(176% vs 116%;P<0.05).多発症例による検討でも,術後全肝実質体積の増加を認めた.CFDを用いた,門脈血流分布の変化では,開窓術後に嚢胞による圧排が解除された門脈枝で流量が増加し(~274%),同潅流域の再生率が大きかった(~186%).さらに,各門脈枝血流量変化率と領域別肝再生率との間に強い相関(r=0.92,P<0.01)を認め,門脈血流分布変化が特殊な肝再生を制御している可能性が示唆された.【考察・結語】肝嚢胞開窓後にみられる肝再生は,全肝で不均一に誘導され,嚢胞による圧排が解除された門脈枝の血流が改善されることにより,同門脈枝の潅流領域の再生が優先して誘導されることが示唆された.
索引用語