セッション情報 口演

食道 治療

タイトル O-105:

高齢者食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の治療成績

演者 竹村 雅至(兵庫医科大学上部消化管外科)
共同演者 東野 正幸(谷川記念病院外科), 堀 高明(兵庫医科大学上部消化管外科)
抄録 【はじめに】低侵襲手術として本邦に導入された胸腔鏡下食道切除術は,その治療成績に関する報告が散見されるものの,高齢者食道癌に対する治療成績に関する報告は少なく,その治療成績は明らかではない.今回,70歳以上の症例を対象とし,胸腔鏡下食道切除術の治療成績について検討した.【対象と方法】2006年1月から2011年12月までに行った食道切除再建例のうち,70歳以上の症例に対して胸腔鏡下食道切除術を施行した39例を対象とした.これら症例の術後合併症や,在院期間,生存率などを検討し,高齢者食道癌に対する胸腔鏡下食道切除術の治療成績と問題点について検討した.【結果】対象の平均年齢は74.2歳(70~80歳),男性:32例・女性7例であり,Ut:9例,Mt:21例,LtAe:9例であった.術前の併存疾患は20例(63%)にあり,虚血性心疾患:7例,高血圧:5例,肺気腫:4例,糖尿病:2例の順で多く,重複癌を有する症例も9例(28%)あった.全例で胸部操作は鏡視下に可能で,腹部操作も33例で鏡視下に行った.手術時間は392.7分,出血量は478.5gであり,胸部ではそれぞれ161.6分,221gであった.術後合併症は23例(71.8%)に発症し,縫合不全:12例・反回神経麻痺:4例・胃管壊死:2例・誤嚥性肺炎:2例・創感染:2例・乳び胸:1例であった.術後在院日数は平均55.7日におよび,100日以上の症例も5例あった.16例が再発死亡し,そのうちわけは血行性:10例(肺:5例・肝:2例・皮膚:1例・骨:2例),リンパ節:6例(頚部:1例・縦隔:4例・腹部:1例)であった.また,他病死を6例(肺炎2例含む)に認めた.1年生存率は54.8%で,5年生存率は24.5%であった.【結語】高齢者食道癌に対しても鏡視下食道切除術を非高齢者と同様に食道癌治療の第一選択としてよいが,術後合併症の頻度は高いことから厳密な術前評価と術後合併症低減の努力が必要である.さらに,呼吸機能の温存が可能な胸腔鏡下切除術は,高齢者に対して術後遠隔期の呼吸器合併症を軽減させることができる可能性がある.
索引用語