セッション情報 ワークショップ7(消化器病学会・肝臓学会合同)

消化器疾患と性差

タイトル 消W7-5:

血清ペプシノーゲン値の性差について

演者 岸川 浩(東京歯大市川総合病院・消化器内科)
共同演者 貝田 将郷(東京歯大市川総合病院・消化器内科), 西田 次郎(東京歯大市川総合病院・消化器内科)
抄録 【目的】ペプシノーゲン(PG)の性差に関しては性差はないとする報告、PG-Iが男性で高いとする報告など様々で一定の報告はなく、またこれまでにピロリ菌感染症例、非感染例で分けて検討した報告はない。今回我々はPGに影響を与える酸分泌抑制剤やピロリ菌の除菌群を厳密に除外した集団をピロリ菌感染の有無で分類し、PGの性差に注目して検討したので報告する。【方法】対象は2007年から2011年に当科にて上部消化管内視鏡を施行し得た359例である。内視鏡所見、性、年齢、血清PG値、ピロリ菌抗体価、空腹時胃液pHを検討した。PG-I 、IIおよび酸分泌の指標として空腹時胃液pHの性差を比較検討した。【成績】男性、女性の年齢は全症例、ピロリ菌陽性例、陰性例のすべてにおいて有意差は認めなかった。PG-I、IIおよび空腹時胃液pHは359例の全症例ではともに性差は認めなかった。ピロリ菌陰性例(206例)では男性でPG-Iが有意に高かった(52.9±23.3 ng/ml vs 46.1±19.5 ng/ml, p<0.05)。陽性例(153例)ではPG-IIが女性に有意に高かったが(17.1±9.0 ng/ml vs 21.1±10.5 ng/ml, p<0.05)、PG-Iと空腹時胃液pHに関しては統計学的な有意差は認めなかった。60歳未満の“若年群”と60歳以上の“高齢群“でPG-IIを比較すると女性では19.3±9.0 ng/ml vs 22.2±1.2 ng/mlと高齢群で有意な上昇を認めるが男性では16.9±9.1 ng/ml vs 17.2±9.0 ng/ml と女性よりも若年群で低く年令とともに増加しない傾向にあった。【結論】胃癌の発生は本邦では約99%がピロリ菌陽性であるため、胃癌発生とPGの関連を考察する上ではピロリ菌陽性例での検討が重要である。今回我々の検討ではピロリ菌陽性例では胃の炎症に関与するとされるPG-IIが男性と比較し女性で有意に高く、年齢とともに増加することが判明し女性においてはピロリ菌感染後により強い炎症が惹起される可能性が示唆された。PG-IIが従来から未分化癌との関連が示唆されていることを考慮すると今回の結果は女性に未分化癌の頻度が高いという疫学的な事実に合致するものと考えられた。
索引用語 ペプシノーゲン, 性差