セッション情報 口演

大腸 IBD 5

タイトル O-147:

潰瘍性大腸炎に対するタクロリムス投与法の工夫

演者 永井 一正(手稲渓仁会病院)
共同演者 野村 昌史(手稲渓仁会病院), 三井 慎也(手稲渓仁会病院), 田沼 徳真(手稲渓仁会病院), 村上 佳世(手稲渓仁会病院), 浦出 伸治(手稲渓仁会病院), 奥宮 雅代(手稲渓仁会病院), 田中 一成(手稲渓仁会病院), 松波 幸寿(手稲渓仁会病院), 真口 宏介(手稲渓仁会病院)
抄録 【背景】潰瘍性大腸炎(UC)に対してタクロリムスを用いる際には,有効血中濃度に安全かつ迅速に到達させることが重要であるが,タクロリムスの確立された投与法はない.【目的】タクロリムス初回投与12時間後のトラフ値から,高トラフ(10~15ng/mL)を保つ維持投与量の推測が可能かを検討した.【方法】<1>検討1:2009年9月から2012年5月の間にタクロリムスを投与したUC患者12例を対象とした.年齢21~64歳(中央値38歳),男女比7:5,全大腸炎型9例・左側大腸炎型3例,再燃寛解型9例・慢性持続型3例.全例中等症.午後10時に初回のタクロリムス3mgを経口投与し,以降,高トラフを目標として12時間毎に内服させた.初回投与12時間後のトラフ値(X)と,高トラフを保つ維持投与量(Y)との関係を検討した.<2>検討2:2012年7月から2012年8月の間にタクロリムスを投与したUC患者3例を対象とした.内訳は,年齢31~70歳(中央値69歳),男女比2:1,全例全大腸炎型,再燃寛解型,中等症.初回投与12時間後のトラフ値を検討で得られた式に代入して,高トラフを保つ維持投与量の予測値を算出し,投与量との関係を検討した.【成績】<1>Y=-0.56X+10.48(r=-0.81)の関係が得られた.投与前から肝機能障害を認め,外れ値となった1例を除外すると,Y=-1.53X+13.32(r=-0.90)となり,より高い相関を認めた.肝機能障害の1例(12時間後のトラフ値:17.8ng/mL)を除き,初回投与12時間後のトラフ値は10ng/mL以下であった(1.5~6.3ng/mL).<2>3例中2例は内服開始後2.5日目に高トラフに到達し,以後2週間投与量を変えることなく高トラフが維持された.1例は投与開始後に肝機能障害を認め,投与量を減量した.【結論】午後10時にタクロリムス3mgを経口投与し12時間後の血中トラフ値を測定することで,維持投与量を推定できる可能性が示唆された.ただし,投与前に肝機能障害を認める症例に対しては,減量などの対策が必要と考えられた.
索引用語