セッション情報 口演

胃癌 基礎1

タイトル O-164:

早期胃癌にみられるmiR-451の発現変化についての検討

演者 北條 麻理子(順天堂大学消化器内科)
共同演者 松本 健史(順天堂大学消化器内科), 浅岡 大介(順天堂大学消化器内科), 上山 浩也(順天堂大学消化器内科), 佐々木 仁(順天堂大学消化器内科), 永原 章仁(順天堂大学消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大学消化器内科)
抄録 【目的】マイクロRNA(miRNA)は組織特異的・発生段階特異的に発現し,下流遺伝子の発現制御を通して発生など種々の生命現象・機能に関わっている.さらに近年の研究によって様々な疾患との関係も明らかにされつつある.特に癌に関しては,癌の発生・進行と一部のmiRNAとの関連が観察され,miRNAが癌の診断や予後の新規指標になるのではないかと期待されている.近年の胃癌との関連解析で,Bandresら(2009)がmiR-451の発現低下が予後不良に関連すると報告し,Brennerら(2011)はその上昇が予後不良に関連すると報告している.このように胃癌とmiR-451の関連についてはまだ一定の見解がえられていない.そこで,我々は,性別,年齢,ピロリ感染の有無や胃癌の病期がこのmiR-451の発現に影響する因子であるという仮説を立て,その仮説を検証するために,これらを一致させた早期胃癌患者群と健常人群のmiR-451の発現を測定した.【方法】年齢,性別を一致させた健常人群およびピロリ菌陽性早期胃癌患者群より同意を得て,内視鏡下で組織を採取した.採取した組織から全RNAを抽出し,TaqManプローブを使って定量RT-PCR解析を行った.【成績】健常人2名[男性,60歳(C1)と66歳(C2)],早期胃癌患者4名[男性,69歳~75歳(P1~P4),胃壁深達度T1a]からの組織RNAに対して定量RT-PCR解析を行った結果,健常人C1の発現量を1とした場合,健常人C2,1.02倍;早期胃癌患者P1,0.22倍;P2,0.18倍;P3,0.91倍;P4,0.96倍であった.従って,早期胃癌患者のうち2名にmiR-451の発現低下が観察され,その他の患者は健常人群と同じであった.【結論】早期胃癌患者におけるmiR-451の発現変化は一様でなかったため,仮説の立証には至らず,また,胃癌とmiR-451の関連性についても明確な結果を得ることができなかった.その原因として,早期胃癌の段階では癌と関連するmiRNAの変化が小さく検出にはいたらない可能性や,今回想定した因子以外によってmiRNAの発現が変化する可能性が考えられた.
索引用語