セッション情報 口演

肝癌6

タイトル O-180:

非代償性肝硬変を合併している肝細胞癌診療の検討

演者 多田 俊史(大垣市民病院消化器内科)
共同演者 熊田 卓(大垣市民病院消化器内科), 豊田 秀徳(大垣市民病院消化器内科)
抄録 【目的】非代償性肝硬変合併の肝細胞癌症例について予後解析を中心に検討する.【方法】対象は1990年1月から2009年12月までの20年間に当院で経験した肝細胞癌1668例のうち,初発時に黄疸,腹水,肝性脳症のいずれかが認められた464例である.男性325例,女性139例で,年齢は65.7±9.5歳であった.これらを成因,血液データ,腹水,飲酒,静脈瘤・肝性脳症の有無,腫瘍因子,治療内容,予後につき検討を行った.【結果】肝硬変の成因はB型/C型/B+C/非B非C(アルコールを含む)の順に66例/328例/11例/59例であり,アルブミン値は2.9±0.5g/dl,総ビリルビン値は2.6±3.0mg/dl,PTは70.0±18.1%であった.腹水はなし/治療反応性/治療不応性が122例/237例/105例,飲酒は常習飲酒家/大酒家/飲酒なし/不明が85例/56例/281例/42例,静脈瘤はあり/なし/不明が195例/160例/109例,脳症はなし/軽度/重度が314例/88例/62例であった.腫瘍因子ではStage I/II/III/IVa/IVbの順に55例/125例/102例/152例/28例であった.治療は肝切除/経皮的治療/肝動脈塞栓術/肝動注/その他/なしの順に10例/104例/123例/32例/8例/187例であった.死因は癌死/肝不全/消化管出血/その他の順に73.3%/15.2%/6.7%/4.8%であった.また生存率は1年/3年/5年/10年がそれぞれ50.6%/22.7%/13.0%/3.5%であった.続いて,上記項目を投入因子としてCox比例ハザードモデルにて多変量解析を行ったところ,アルブミン値2.8mg/dl未満がハザード比1.36,95%信頼区間:1.09-1.70,P=0.006,Stage IVがハザード比3.99,95%信頼区間:3.13-5.09,P<0.001,治療なしがハザード比2.83,95%信頼区間:2.22-3.60,P<0.001でそれぞれ生存に寄与する因子として選択された.【結論】黄疸や腹水に対する臨床的判断はもちろんであるが,今回の検討では非代償性肝硬変に合併した肝細胞癌であっても,アルブミン値が比較的良好で腫瘍の進行度がStage III以下の場合は,癌に対する治療介入を行うことにより生存率が改善することが示唆された.
索引用語