セッション情報 口演

小腸 病態

タイトル O-194:

マウス小腸虚血再灌流傷害におけるmTOR(mammalian target of rapamycin)の役割

演者 飯田 貴弥(京都府立医科大学消化器内科学)
共同演者 内藤 裕二(京都府立医科大学消化器内科学), 高木 智久(京都府立医科大学消化器内科学), 堅田 和弘(京都府立医科大学消化器内科学), 鎌田 和浩(京都府立医科大学消化器内科学), 内山 和彦(京都府立医科大学消化器内科学), 半田 修(京都府立医科大学消化器内科学), 八木 信明(京都府立医科大学消化器内科学), 吉川 敏一(京都府立医科大学消化器内科学)
抄録 【背景】小腸虚血再灌流傷害は上腸間膜動脈閉塞症,手術,外傷等の病態においてみられ,適切な治療がなされなければ多臓器不全を来し致死的になりうることが知られている.しかしながら,小腸虚血再灌流傷害の病態や治療法については未だ不明な点も多い.mammalian target of rapamycin(mTOR)は細胞分化や増殖の関与や,悪性腫瘍,炎症等の病態における治療標的因子として注目されている.また,mTORは飢餓応答,癌,老化等の様々な生命現象に関わるオートファジーの抑制因子としても知られている.今回,我々はマウス小腸虚血再灌流傷害モデルにおいてmTOR阻害剤であるrapamycinを用いて,本病態におけるmTORの役割の検討を行った.【方法】7週齢雄性C57BL/6マウスを用いて上腸間膜動脈を60分間結紮し,その後,再灌流する小腸虚血再灌流傷害モデルを作成した.rapamycin投与群においては結紮前に腹腔内投与を行った.評価項目として生存率,腸管洗浄液中の漏出蛋白,小腸粘膜における炎症性サイトカイン産生,小腸粘膜内好中球浸潤(MPO活性),mTOR関連蛋白質の発現についての検討を行った.【結果】小腸虚血再灌流傷害によりMPO活性の増加,炎症性サイトカイン(TNFα,IFNγ)産生の増加,漏出蛋白の増加が認められた.一方,rapamycin投与群ではMPO活性・サイトカイン産生・漏出蛋白の増加が抑制され,小腸虚血再灌流傷害後の生存率は有意に改善した.また,虚血再灌流傷害により小腸粘膜内のmTORは活性化されていたが,rapamycin投与によりmTOR活性化,ならびに,mTOR下流のp70S6kリン酸化は制御されていた.小腸粘膜のLC3-IIの発現はrapamycin投与により亢進し,オートファジー誘導による恒常性の維持が示された.【結語】小腸虚血再灌流傷害におけるmTOR阻害は,腸管炎症,ひいては,生存率を改善することが明らかとなり,新規治療標的分子としての可能性が示唆された.
索引用語