セッション情報 口演

肝炎 他

タイトル O-209:

アルコール性肝炎重症度スコア(Japan Alcoholic Hepatitis Score)の有用性の検証

演者 堀江 義則(国際医療福祉大学山王病院消化器内科)
共同演者 山岸 由幸(慶應義塾大学医学部消化器内科), 海老沼 浩利(慶應義塾大学医学部消化器内科), 日比 紀文(慶應義塾大学医学部消化器内科)
抄録 【背景】一部のアルコール性肝炎(AH)では,禁酒しても肝腫大が持続する例がある.我々は,消化管出血,感染症,腎不全,DICなどの合併症が予後に大きく関与しており,合併症を起こす前に治療介入を行うことが重要である.しかし,血漿交換(PE),白血球除去療法(GMA),ステロイド投与,透析(HD)などの施行率は依然として低い.本邦におけるAHの重症度スコア(アルコール医学生物学研究会編,Japan Alcoholic Hepatitis Score:JAS)が作成されたが,このスコアの有効性についてさらなる検討が必要と考えられる.【目的・方法】今回,日本消化器病学会認定,関連施設に対して2008-2010年度に入院した重症AHについてのアンケートを行い,重症AHの最近の現状について検討した.Receiver-operating characteristic curve(ROC)を用いて,JASの有用性をGlasgowスコア(GAHS)と比較検討した.【結果】123例中生存例76例,生存率は61.8%で2004-2007年度と同様であった.死亡例で,TB(生存11.3mg/dl;死亡14.9),Cr(生存1.3mg/dl;死亡2.1),PT(INR)(生存2.13;死亡2.63)が高かった.死亡例で,消化管出血(生存20%;死亡43%),腎不全(生存33%;死亡72%),DIC(生存11%;死亡40%)の合併率が高かった.PE,GMA,ステロイド投与,HDの施行率はPE 22%,GMA 14%,ステロイド投与28%,HD 15%と低かった.白血球数10,000/μl以上でGMA未施行群では,GMA施行群ならびに白血球数10,000/μl未満の群より予後不良であった.ROC解析では,JASがcAUC=0.731に対しGAHSはcAUC=0.648と,重症度スコアと予後の相関はより強いと考えられた.Cut off値は,JASで10,Glasgowスコアで9が再確認できた.【結語】死亡例でTB,Cr,PTといったJASの項目の高値例が多かった.また,重症度と予後の相関は今回もJASの方がGAHSより優れていた.今後,このスコア用いて異常値に沿った各集学的治療の施行率を上げ,生存率が向上するかさらなる検討が必要と考えられる.
索引用語