セッション情報 口演

肝 基礎2

タイトル O-211:

肥満に伴う肝の脂肪化および炎症性変化における脾臓の役割

演者 所 征範(大分大学総合内科学第一講座)
共同演者 後藤 孔郎(大分大学総合内科学第一講座), 清家 正隆(大分大学総合内科学第一講座), 岩尾 正雄(大分大学総合内科学第一講座), 正 宏樹(大分大学総合内科学第一講座), 西村 順子(大分大学総合内科学第一講座), 吉原 光江(大分大学総合内科学第一講座), 遠藤 美月(大分大学総合内科学第一講座), 織部 淳哉(大分大学総合内科学第一講座), 本田 浩一(大分大学総合内科学第一講座)
抄録 【目的】非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は,メタボリックシンドロームの肝臓における表現型と考えられており,肝硬変や肝癌に進展することはよく知られている.近年,肥満の程度が比較的軽い本邦においても,NASHの症例は増加傾向にあるが,NASH発症のメカニズムは十分に解明されていない.これまで,我々は,肥満により脾臓からのIL-10合性能が低下し,さらに脾臓由来IL-10が欠乏すると,NASHとよく似た所見を認めることを明らかにしている.また,ビタミンE(Vit.E)の長期投与がNASHの総合的組織所見やALT,ASTを改善するという報告がある.今回,肥満由来の肝脂肪化や炎症性変化における脾臓の役割について検討した.【方法】1)食餌誘導性肥満モデルラットと通常ラット間で,末梢血中の破砕赤血球の割合を用いた脾臓のフィルタリング機能および脾臓由来のサイトカイン発現量,脾臓内の酸化ストレスの検討により,脾臓の機能を評価した.また,IL-10分泌に重要な役割を果たすB細胞のマーカーであるCD20の脾臓内発現量および血中サイトカイン濃度も測定した.2)肥満ラットを,Sham群,脾臓摘出(SPX)群,Sham+Vit.E投与群,SPX+Vit.E投与群に分け,肝臓内の炎症度や肝機能を評価した.【結果】1)肥満ラットでは,脾臓のフィルタリング機能の低下,脾臓内で酸化ストレスの亢進,および脾臓からのIL-10分泌能の低下がみられた.また,血中IL-10濃度と破砕赤血球の割合に比例関係がみられた.2)肥満によるALTの高値,肝の脂肪化や炎症性変化がVit.Eの投与により改善したが,SPX群ではそのようなVIt.Eの効果は認められなかった.【総括】VIt.E投与により脾臓の機能とくにIL-10合性能が改善することによって,肥満に伴う肝の脂肪化および炎症性変化が改善すると推測された.また,臨床的には末梢血中の破砕赤血球の割合により,脾臓のIL-10分泌能が予測できると考えられた.
索引用語